研究課題/領域番号 |
15K03810
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
工藤 栄一郎 西南学院大学, 商学部, 教授 (30225156)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 会計導入教育 / アクティブラーニング / 海外の大学における会計教育の特性 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、諸外国における会計教育の歴史的経緯と社会背景の調査、具体的には、大学等の会計カリキュラムやその運用、大学以前の課程における会計教育の有無や実態、会計専門職と大学会計教育との関連性などについて聞き取り調査と資料確認を行った。また、日本で実施しているいわゆるアクティブラーニングの手法を、外国の大学生を対象として試験的に適用し、アンケートと効果測定を行うとした。 調査研究の訪問対象としたのは、スペインのアルカラ大学(Universidad de Alcala)、オーストラリアのRMIT大学(Royal Melbourne Institute of Technology University)ならびにメルボルン大学(The University of Melbourne)、ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルク(Friedrich-Alexander Universidad Erlangen-Nurnberg)、それにイタリアのヴェローナ大学(Universitat; degli studi di Verona)とパルマ大学(Universitat; degli studi di Parma)である。このうち、ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学とイタリアのパルマ大学では、それぞれ10数名の学生を対象にして、ボードゲーム「モノポリー」を使っての会計記録のアクティブラーニングの授業を行い、学生にアンケート調査を行った。 このほか、日本国内内での研究活動としては、教育指導要領の形成過程において会計教育がどのように変化してきたのかについての調査と、名古屋大学や高松大学の学部学生を対象としたアクティブラーニングによる会計教育の試験的実践を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の1年目である前年度(平成27年度)は、いくつかの事情から、当初予定していた研究のペースがやや遅れた状況にあった。とくに、諸外国における会計導入教育の実態やその歴史的および社会的背景についての調査が手薄となっていたので、28年度はそれら課題を挽回すべく、海外での学会参加の機会に乗じて、その前後に、研究協力者を中心として、聞き取りならびに資料収集の調査を積極的に行った。 加えて、上述したように、アクティブラーニング手法を用いた授業のデモンストレーションが実践でき、外国人学生の興味深い反応を観察することができた。さらには、いくつかの大学においては、授業参観の機会を得ることもできた。 ただし、28年度の予定のひとつとしてあげていた、日本で形成された会計教育制度がアジア諸国においてどのような影響を与えたのかという歴史的研究とその後の変遷などについては十分な研究ができてはいない。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、前年度に引き続き、日本と会計思想が近似していると思われる、つまり、簿記などの会計技術を重視して導入教育を設計運用しているヨーロッパ諸国、具体的には、ドイツ、イタリア、スペインなどで、学生が会計知識の習得にどのような動機をもっているのか、また、知識習得の段階がどのように組立っているのか、さらには、学習上の障壁が日本で認知されているものとどのように異なるのか,などの問題を明らかにしていく。これまでの研究協力者に加えて、年度内に開催される国際学会(6月スペイン・バレンシアにおけるヨーロッパ会計学会および9月イタリア・ヴェローナでの学術雑誌Accounting History国際学会など)で学会報告するとともに、研究交流を拡大しより詳細な情報の収集を図る予定である。 また、日本における伝統的な会計の学びの形成と進展の過程について、学会報告(日本簿記学会、日本会計研究学会、日本会計史学会、日本会計教育学会など)および論文の公表をおこなう予定である。
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