平成30年度に行った研究の概要は以下のとおりである。 ①会計リテラシーの社会的な普及を目指す諸機関の活動に関する調査とそれへの参与。具体的には、日本公認会計士協会(「ハロー!会計」)、日本税理士連合会(「租税教室」)、日本銀行(「金融教育プログラム」)、日本証券業協会(「投資教育」)などを対象に、その教育コンテンツに含められている会計の内容と教示方法について調査を行った。なかでももっとも関与したのは、日本公認会計士協会の各支部等が主催する「ハロー!会計」である。②日本簿記学会に関連して開催される「高校簿記教育懇談会」での講演を機会として、商業高等学校等における会計教育の課題整理と解決可能性について検討を行った。これを契機として、中等教育と大学におけるいわゆる接続教育のあり方についての問題意識の展開が開始された。③海外における会計導入教育の調査と実験を継続し、韓国の釜慶大学校において、アクティブラーニング手法による授業を行い、事後アンケートによる情報収集を行った。また、中国立信会計学院を訪問し、そこでの会計教育についての調査を行った。④小学校から中学校の普通教育の初等中等課程の学習指導要領(算数、社会、家庭科など)を対象に、会計に関連する要素の抽出を行い、広い意味での会計リテラシーの環境整備についての検討を行った。この研究活動に関しては、学習指導要領が整備された近代的教育制度の確立当時にまでさかのぼって調査する予定であったが、現時点では遂行に至っていない。 なお、補助事業期間全体にわたっての実績については、①日本の会計教育の導入に関する歴史研究、②大学の初年次における会計教育の制度あら日に実践に関する国際比較調査、③アクティブラーニング手法を用いた会計導入教育の実験とその結果分析、④社会全般に対する会計リテラシーの定着に関する予備的検討(課題の整理)に大別することができる。
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