研究課題/領域番号 |
15K03814
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
富永 茂樹 京都大学, 人文科学研究所, 名誉教授 (30145213)
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研究分担者 |
橋本 周子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (30725073)
上野 大樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 日本学術振興会特別研究員PD (00727779)
稲永 祐介 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (80757930)
川村 文重 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 講師 (40759867)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 習俗 / フランス / フランス革命 / 衣食住 / 演劇 / 制度 |
研究実績の概要 |
本研究では、かつて社会を理解するために不可欠であった「習俗」という観念の理論と実践の変遷を、17世紀末から18世紀にかけてのフランスを出発点にして、フランス革命後第三共和政を見通す長期的な観点から解明することを最終目標に据えている。これを達成すべく、本年度はフランスから政治哲学・政治理論の専門家であるリュシアン・ジョーム氏(国立科学研究センター名誉教授)を招聘して、フランス革命における制度と習俗に関する講演会を開き、活発な意見交換を行った。そこで得られた知見をもとにして各自がそれぞれ個別の観点から考察を深め、主に17世紀末から18世紀後半までの習俗の観念の内実を明らかにすることを目指し、その成果を定期的に開催した研究報告会で共有した。 具体的には、①「習俗」という観念が「法」と対になる形で哲学上重要な意味合いを帯びてきた時期において、法を基礎づける思想傾向としての画一性(ないし画一化)に対抗した多様性(ないし複数性)の表れの問題を、フォントネルのテクスト読解を通して、習俗の観念形成史に引き寄せつつ考察した。 ②食という国民の習俗の問題と大いに関わるにもかかわらず、今まで研究対象として扱われることの少なかったテーマを取り上げ、18世紀後半期フランスにおける習俗としての食の具体的な実相に迫りうる当時出版された著作を発掘し、そこから習俗としての食の問題のみならず、食を歴史的に編纂するという18世紀末に生まれた習俗の諸相に対する意識化の眼差しそのものに着眼して考察を深めた。 ③ディドロの演劇論を取り上げ、当時の都市に生きるブルジョワ市民の生活とモラルを表現する新たな演劇ジャンルが誕生した思想的背景や、同時代の演劇人による演劇論を比較することで見えてくる、演技表現の変化と観客の立場の変化の呼応関係について考察し、それを通して、劇場という場に芽生えうる自生的な秩序の有り様を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の研究を通して、「習俗」という概念そのものの持つ広がりと深さを研究グループとして改めて確認することにもなったのだが、当初想定していなかった方面への展開も見通せるようになり、その結果、応募時に提出した研究計画よりも内容が充実したものになりつつある。しかしながら、当初の計画に修正を加えつつ各自の研究を深めていくことに専念したため、各新たな展開に道筋をつけるのに多少時間が必要となり、その分当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
毎月ないし2ヶ月に1回の研究会を継続実施する。また、5月には習俗概念テーマに密接に関わるフランスの研究者の講演会のを2回開催し、意見交換を行う予定である。 研究参加者は関西地方と関東地方に離れて居住しているため、インターネットを十分に活用し、研究会以外での情報交換も平成28年度に引き続き活発に行う。 平成29年度に開催予定であるフランス、パリでの国際研究集会の準備に取り掛かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の稲永と川村は、平成29年度に国外で本研究の成果を発信したいと考えており、そのための旅費などの費用を確保するべく、平成28年度は配分額を満額使用しなかったことから差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に開催予定である国外での国際研究集会に向けて、本研究の成果を発表すべく、その資金として使用する予定である。
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