研究課題/領域番号 |
15K03823
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
菅野 剛 日本大学, 文理学部, 教授 (10332751)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会的ネットワーク / 社会階層 / 社会調査 / ポジション・ジェネレータ / 再現可能な研究 / reproducible research / 文芸的プログラミング / literate programming |
研究実績の概要 |
当該年度は、多様な分析手法の習熟につとめながら、社会的ネットワークの測定と、社会階層と社会的ネットワークの関連についての実証的研究を行った。 設問に含める回答選択肢の違いによって生じる変数の効果の相違(菅野 1998)、社会関係の有無についての構造的ゼロの影響(菅野 2006)、調査データが全国規模か地域間比較であるかという特徴の違いで生じる諸変数の効果の相対的な大きさの違い(菅野 2013)、一回の横断調査データの分析から生じる、ネットワークに対する加齢・時代・コホート効果の混在(菅野 2011)などの分析を進めるとともに、知覚されたサポート、実行されたサポートなどの測定の違いによる知見の相違、回答選択肢における背反性の無視、効果についてのアドホックな解釈などさまざまな点について分析結果と具体的事例を検討した。様々な方法によって社会的ネットワークとして測定されているものの中身が、実際には何であるのか、今後も慎重に検討をしていきたいと考えている(日本行動計量学会第43回大会にて報告)。 また、これまで収集した地域データを用いて、ポジション・ジェネレータによるネットワーク測定について、比較分析を行なった。多母集団解析と平均構造モデルを適用し、測定不変と平均の違いについて検討を行ない、ある程度の普遍性と相違について確認を行った(第61回数理社会学会大会にて報告)。 その他に、 Reproducible Research (再現可能な研究)という観点から、一般母集団からの無作為抽出標本と、モニター母集団からの標本における知見の違いも、重要な問題である。これら二種類の異なる特徴をもつ複数のデータにおける相違について、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会的ネットワーク、統計学、多変量解析、プログラミングについての情報収集と習熟につとめた。統計的コンピューティングとグラフィックスのためのソフトウェア環境 R といったデータ解析に特化した DSL は、データ規模が中規模までであれば、作業効率が優れている。他方で、データの規模や、将来的な再現可能性という観点から、プログラミング言語や分析手法について、これまで用いてきたものと異なるものを新たに検討した。ANSI で標準化されている汎用言語の一つとして Common Lisp を用いて、基礎的なデータ分析を行うなど、いくつかの方法を試みた。 Scheme に影響を受けたと言われる R のシンタックスは Lisp 族と親和性が高い。 Emacs Org-mode では R や Lisp に限らず、 Python、 Maxima、 Stan、 Julia なども一つのドキュメント内で統合的に利用できるため、柔軟な分析が可能となる。研究における短期的な効率と長期的な発展を視野に入れての蓄積と、バランスをとりながら進める必要性がある。近年、データと分析環境の双方において、再現可能な研究(reproducible research)や、文芸的プログラミング(literate programming)などが重要になってきている。調査研究環境全般にわたって、今後もこれらの点について注意をするようにつとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集した情報と資料、習得した手法を用いて、郵送地域調査を実施し、データ分析を行う。近年は、ネットワークに関する研究が、領域を横断して、多様な分野で急速に進展している。地域調査の実施や全国調査データを用いての分析という基本的な方向を維持しながら、新たなデータ収集方法や、これまでと異なるデータ分析の仕方についても目配りをしつつ、柔軟な姿勢で研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでのところほぼ予定通りに進めているが、残額は1450円である。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通りに使用する予定であり、残額1450円は物品費にプラスして使用する計画である。
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