研究課題/領域番号 |
15K03825
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
野崎 敏郎 佛教大学, 社会学部, 教授 (40253364)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日独学術交流 / フェルディナント・テンニース / マックス・ヴェーバー / カール・ラートゲン / マリアンネ・ヴェーバー / 比較社会学 |
研究実績の概要 |
ドイツ調査を2回、東京調査を1回実施した。前年度および当該年度の調査結果に依拠した論文を『社会学部論集』第63号(2016年9月刊)、第64号(2017年3月刊)に寄稿し、ヴェーバー学説の日本への影響、日本におけるヴェーバー受容の問題性等について掘り下げた。また、重要著作を購入し、閲読・研究をすすめた。現在、『社会学部論集』連載の続編を準備中である。 8~9月の調査で、ドイツ世界経済研究所図書館(キール)にのみ所蔵されているドイツ社会政策学会関連の稀覯資料を閲覧し、ドイツ社会科学者たちの第一次世界大戦中および敗戦直後の動静をくわしく点検した。併せて、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州立図書館(キール)を再訪し、フェルディナント・テンニースとその周辺にかんする資料(手稿)を新たにいくつか閲覧した。ハンブルク州立公文書館では、カール・ラートゲンの足跡調査を継続した。また、プロイセン文化財枢密公文書館(ベルリン)において、ヴェーバーとラートゲンの周辺人物にかんする重要資料(手稿)を発見したが、時間の関係で、かなりの史料の判読を次回に回した。 2月の調査で、バイエルン州立図書館手稿室において、マリアンネ・ヴェーバー関連史料を閲覧し、マックスとマリアンネとの間で交わされていた往復書簡の復元に取り組んだ。これによって、また、ラートゲンの令孫(ボン在住)を訪問し、ラートゲンの滞日時の書簡について検討した。 3月に、国立国会図書館憲政資料室に収蔵されている阪谷芳郎関係文書を調査し、ラートゲンの東京大学在職中の講義録を閲覧した。 図書は、上記ドイツ人学者たちと日本人留学生等に関連するものを中心に購入し、読解をすすめた。『ヴェーバー全集』の最新巻とラートゲンの講義録(復刻版)の購入は、予算の関係で次年度に回した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度と当該年度の調査によって、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州立図書館に収蔵されているテンニース関連史料の判読は基本的に完了した。これによって、テンニースの研究活動と、彼と交流のあった日本人学者たちの研究活動とを突きあわせて検討しうるようになった。これは大きな成果であり、これに依拠して、テンニースから日本人社会学者たちへの影響を考証することができると考える。 プロイセン文化財枢密公文書館(ベルリン)を二度訪問し、重要資料の判読・分析を進めることができた。資料の複写物も取得したが、その多くは、非常に質の悪い紙に書かれており、インクの褪色も著しいので、複写物では判読続行が困難であり、次年度この館を再訪する必要があると思われる。また関連史料の調査が必要になる可能性もある。 ドイツ世界経済研究所において、ドイツ社会政策学会の動向を把握することができた。ここから、ヴェーバーらの動静が明らかになりつつあり、またそれは、ドイツ人社会科学者たちの動向が、日本の社会科学にどのような影響を与えたのかを考証するうえで重要な手がかりとなるだろう。 ラートゲンの令孫から、ラートゲンが滞日時に書いた書簡の原史料を閲覧できる可能性について伺ったので、原史料所持者との連絡を試みた。 国立国会図書館憲政資料室に収蔵されている阪谷芳郎関係文書のなかに含まれているラートゲン講義録は非常に分量が多いので、本研究の完了までに、すべて閲覧しおえるのは、やや困難だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツにおけるこれまでの史料調査の進捗状況、および残された調査機会(日数)の制約を勘案して、平成29年度夏期調査においては、ハンブルク州立公文書館におけるラートゲンの事績調査、プロイセン文化財枢密公文書館におけるヴェーバーとラートゲンの周辺人物にかんする調査を中心とし、可能な範囲内で、他館における関連史料・文献も調査する。 ラートゲン滞日書簡集の原史料を閲覧できるならば、それは今後の研究の進展にとって大きな意義を有するので、平成29年度中に、閲覧許可を得ることができるよう交渉する。それにおうじて、夏期調査のスケジュールを調整する。 国立国会図書館憲政資料室に収蔵されているラートゲン講義録をひきつづき調査するが、その全体を詳細に分析するのは困難であるため、本研究の完了までに、講義録のどの部分に重点を置くのかを見極め、精選しながら閲読・分析する。 『ヴェーバー全集』の最新巻とラートゲンの講義録(復刻版)他を購入して研究する。 本研究課題にとって必要な資料が揃いつつあるので、第一次世界大戦後から第二次世界大戦集結までの時期を中心に、日本人学者たち・留学生たちの動向を整理し、また日独学術交流のさまざまな側面に光を当てる作業をすすめる。 『社会学部論集』に連載中の論文の完結をめざすとともに、日独学術交流の知られざる側面を解明する論稿を準備する。また、史料調査と社会学的研究との方法論的関連づけにかんする論文を『社会学評論』に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年3月21日~23日に東京において史料調査を実施したが、その旅費61,220円が、年度内の残額を超過しており、これを次年度支払いとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において旅費61,220円を支払う。
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