本研究は、日本の近代化過程を、動員(労務動員及び軍事動員)という観点から捉えなおし、戦争や植民地といった負の側面と経済発展や人権といった望ましいとされる側面とを、「統治性(M.フーコー)」の一環した論理のもとに把握するという全体構想の中に位置づけられる。そのため、本研究では、第二次世界大戦(アジア太平洋戦争)期の、植民地朝鮮からの労務動員に焦点を当て、日本において犠牲になった朝鮮人の遺骨をめぐる諸問題を中心に、歴史社会学的方法及び聞き取り調査等によってその人的・物的・文化的資源動員を総合的に把握するとともに、総力戦下の植民地動員計画の資源動員論的分析を行うことを目指す。もって日本の近代化過程における統治合理性を解明するための「動員理論」を構築することを目的とする。最終年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 ①第33回日本解放社会学会大会(於 東洋大学 2017年9月6日~7日開催)において、本研究の成果に基づき、「戦時期における総力戦と植民地からの労務動員をめぐって―住友鴻之舞鉱山被強制動員生存者への聞き取りを通して―」というタイトルの研究発表を行った。またこの研究発表を論文化すべく、補足データを収集し分析を行っている。 ②動員計画については、1)「(植民地動員を含む)国家総動員計画」はどのように作成されたか、2)「総力戦体制」下での動員組織(機構)の形成とその整備、3)動員法の体系化とその施行を通して動員はどのようになされたか、といった点を明らかにするために、行政資料等を探索し、各地に残された資料を収集した。 ③本研究テーマの一環として、沖縄戦における植民地朝鮮からの動員について現地調査を行った。沖縄戦における植民地動員の視点は、日本の総力戦体制を把握する上で、きわめて重要な意味を持っていることがわかった。今後さらに深めて行きたい。
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