研究課題/領域番号 |
15K03829
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 一穂 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (20150253)
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研究分担者 |
徳川 直人 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10227572)
何 淑珍 東北大学, 情報科学研究科, 博士研究員 (60624848)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農村社会学 / 地域社会 / 集住化 / 日中比較 |
研究実績の概要 |
本研究では、現在急激な変化を見せている農村社会の構造変動を、日本と中国の農村地域における事例調査研究によって明らかにしようとする。そのために、初年度である平成27年度には、4月に山形県鶴岡市で稲作農家に、11月に北海道別海町で酪農農家にインタビュー調査を行った。また、12月には中国山東省で各種機関へのヒアリングを行い、また中国農村における集住化の現状についてのシンポジウムに参加して中国側研究者と研究交流を行った。 その結果、今日の日本の農村社会においては、高齢化が一段と進行し、他方では新規就農者も極めて少ないために、農業従事者が減少しており、農業生産に深刻な影響が出始めていること、さらに、それにとどまらず、農村地域におけるさまざまな生活上の諸関係や諸活動の維持が困難になってきていることが明らかになった。それはいわゆる「限界集落」というような地域生活の維持が難しい農村が広範囲に拡大していることの現れである。農業生産の持続的発展の重要性は周知のことであるが、農村社会そのものの持続的発展が危機的な状態に入りつつあることが明確になっているといえるだろう。 その点で示唆的なのは、現在中国で推し進められている集住化政策である。これは、これまでの旧村の居住地から新たな集合住宅を建設して移住することで、農民の生活向上や農村社会の維持発展を目指しているものである。この集住化が中国でも問題が先鋭化しつつある高齢化に対して有効であるといわれているが、しかし調査の結果、旧来の社会関係が新たな集合住宅に居住することで変化していることが明らかになった。そのために、この集住化という政策が高齢化問題に対応できるとは一概に言えないと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、平成27年度には日本と中国において調査研究を行い、研究の目的をほぼ達成できた。 しかし、当初の計画以上には研究が進展しなかったといわざるをえない。その理由としては、研究当初に目指していた詳細な調査研究が一部分で進まなかったことが挙げられる。日本においては、年に2回予定していた山形県鶴岡市と東根市での事例調査が1回にとどまり、他方で計画になかった北海道別海町での調査を行ったことで、研究の進展が当初の計画とは異なることになった。山形県での調査は東根市の対象者の事情により実施できなかった。しかし、稲作地帯との比較という趣旨で北海道別海町での調査を実施し、稲作と酪農という農業経営の違いにもかかわらず地域生活の維持が困難になってきていることを明らかにした。また、中国においては、山東省の農村の現地で調査する予定であったものが、現地での事情により各種機関でのヒアリングにとどまったことが研究の計画とは異なることになった。この点については、次年度に現地調査を実施できるように現地の所轄機関と調整中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画においては、第2年次になる平成28年度には個別農家への詳細なインタビューを予定しているが、この計画を確実に実行する。そのために、山形県鶴岡市においては、鶴岡市役所およびJA庄内での機関調査を実施して、鶴岡市管内の農村の現状を的確に把握するとともに、すでに調査対象者として確約している個別農家へのインタビューを実施する。それとともに、北海道別海町での個別農家へのインタビューも着実に実施するために、調査の目的や対象、調査の日程などについて綿密な計画を立てる。 中国山東省での農村調査については、現地の所轄機関との調整をさらに進めて、円滑な現地調査ができるようにする。そのために、共同研究者が所属している山東省社会科学院との学術交流と綿密な研究打合せを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度である平成27年度には、中国山東省での農村調査は、現地でインタビュー調査を実施する予定であった。その場合に備えて、宿泊する山東省済南市と現地農村との間での交通費(車両借上代など)や現地農村での諸費用(食事代など)を支出する計画を立てていたが、現地での事情により各種機関でのヒアリングや国際シンポジウムへの参加にとどまったことで、日本から済南市への交通費や済南市での宿泊費などの支出だけとなり、調査費用が当初の計画よりも少額となり、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を次年度に回すことによって、平成28年度の中国山東省での調査は、当初の計画よりも調査範囲と調査日程を拡大して実施できると考えている。 また、初年度に日本で稲作地帯と酪農地帯を比較調査したように、中国農村の実状を中国内部で比較検討するために、畑作地帯である山東省と牧畜地帯である内モンゴル自治区とを比較調査する計画を立てており、その実施にむけて現地の所轄機関と調整中である。これが実現すれば、山東省での調査費用と内モンゴル自治区での調査費用とが必要となるが、次年度使用額と次年度の助成金とを合わせた額で調査が可能だと考えている。
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