研究課題/領域番号 |
15K03831
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
川端 浩平 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (80563965)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 在日コリアン / 放射能汚染 / 差別 / 共生 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東日本大震災以降の福島における放射能汚染をめぐる不安といった困難な状況やリスクに向き合うなかで、「非集住的環境」で生活する在日コリアンが、いかに日常生活や身近な人間関係を通じて共生の実践=多文化的実践を遂行しているのかを明らかにすることである。具体的には、郡山市、福島市、いわき市などの福島県の主要都市および、他所へ避難した在日コリアンたちの参与観察および聞き取り調査を実施している。とりわけ、日本人と結婚した在日コリアンおよび「ダブル」の子どもたち、またその家族・親族や地域社会における関係性とそれに伴う帰属意識の混淆性に焦点を当てることにより、既存の研究では不可視化されてきた多文化的実践を通じた共生のあり方を明らかにすることを目的としている。平成29年度は、前年度に引き続き、日本人と結婚している在日コリアンの聞き取り調査を実施した。また、福島県郡山市にある福島朝鮮初中級学校へのフィールド調査および聞き取り調査を実施し、福島県における在日コリアンコミュニティ形成の歴史的背景に関する理解を深めることを試みた。東日本大震災から7年が経過するなかで、放射能汚染をめぐる関心はかなり低くなっていることが明らかになったとともに、そのことが朝鮮学校の学生数の減少も含め、コミュニティの再生産機能に影響を及ぼしていることが明らかとなった。これらの研究成果をまとめ次年度に日本語および英語にて社会に発信するための編集および執筆を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関での教育その他の業務および他の研究との兼ね合いで、フィールド調査および聞き取り調査を十分に実施することができなかった。また、昨年と同様に、福島県内に在日コリアンが少ないこと、県外へ避難している在日コリアンの調査対象者を見つけることが難しいために、調査対象者を見つけることに苦労した。以上の理由のために、平成29年度に関しては、これまでの研究成果をまとめ、書籍・論文および学会報告することを断念し、研究期間をさらに1年間延長することで対応する。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、県外へ避難している在日コリアンや避難先から戻ってきた在日コリアンの調査対象者探しを継続して実施する。また、8月~9月にかけて対象者により密着した参与観察型の調査を遂行し、より充実した質的データの習得をめざす。これらの研究を進めるとともに、平成27年度からの調査データをまとめ、国内外に発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関における教育およびその他の業務のため、フィールドワークおよび聞き取り調査を予定通り実施することができなかっため、次年度使用が生じた。平成30年度は、8月~9月に計画している調査の実施に繰り越した予算を使用する予定である。
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