研究課題/領域番号 |
15K03832
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
渋谷 敦司 茨城大学, 人文学部, 教授 (90216028)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原子力事故 / 原子力世論 / 世論調査 / 住民参加 / 原子力政策 / ローカル・ガバナンス |
研究実績の概要 |
2010年度から2016年度まで東日本大震災と福島第一原発事故を挟んで継続してきた、本研究と関連する他の科研プロジェクトの一環である原子力世論調査のデータを活用しつつ、米国および日本における原子力世論調査の現状と政策主体による世論調査の活用について、ローカル・ガバナンスという観点から批判的考察を行った。具体的には、原子力問題の本質が原子力利用のリスクを過小評価ないしは否認する独特の「言説」、「思考パタン」、「世界観」(それらをここでは「原子力話法」と言う)にあるとする観点から、これまでの原子力に関する世論調査が原子力利用に対して受容的態度を広げていくための広報・宣伝活動の一環として実施され、「原子力話法」の重要な構成要素として機能してきたことを、米国および日本で実施されてきた世論調査を事例的にとりあげて確認する。そして、福島第一原発事故を経験した現在でも「世論」と「政策」の乖離が是正されていないこと、さらに、東海第二原発が立地する地域のレベルで見てもこのギャップはむしろ拡大する傾向にあることを、われわれが実施してきた住民意識調査結果をふまえて指摘する。結論として、世論調査が安全神話を構築するためのレトリックから、住民意思を原子力政策に反映させる民主主義の手段に転換されねばならないと主張した(渋谷敦司著「震災後の原子力世論の変化と地域社会:原子力話法としての世論調査を超えて」茨城大学人文学部『茨城大学人文学部紀要「社会科学論集」』第63号、2017年2月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度に予定していたつくば市民を対象にしたアンケート調査を実施することができなかった。2010年度から継続実施してきた原子力意識に関するアンケート調査結果のデータを整理し、活用することが中心となってしまい、追加調査としてつくば市民へのアンケートを実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
つくば市民への科学・技術、原発等に関する意識調査を実施し、つくば市の女性団体、東海村周辺の女性議員、女性団体等へのインタビュー調査を行い、科学・技術を中心にしたまちづくり、地域振興策を展開するつくば市、東海村に居住する住民の科学・技術に対策ものの考え方、世界観を、量的、質的調査を通じて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
つくば市民と水戸市民を対象にしたアンケート調査を実施することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
つくば市をはじめとした県内複数の市町村住民を対象にした科学・技術に関する意識調査を実施、合わせてインタビュー調査結果データの文字起こし、内容分析を行う。アンケート調査の実施・データ入力、およびインタビュー調査結果の文字データ化は外部業者に実施を委託する。
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