研究課題/領域番号 |
15K03832
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
渋谷 敦司 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (90216028)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学・技術 / リスク / ローカルガバナンス / 住民参加 / 世論調査 / 原子力 / 研究学園都市 |
研究実績の概要 |
茨城県は、つくば研究学園都市に加えて東海村を中心とした原子力関係研究機関の集積を活かした新たな科学・技術の拠点形成を、「サイエンスフロンティア21構想」(2002年3月策定)を軸に展開してきた。このような科学・技術の研究開発拠点形成を地域活性化の有力な柱とする政策は、震災と福島第一原発事故を経て2016年3月に策定された、「第三期いばらき科学技術振興指針」にも引き継がれ、現在に至っている。他方で、震災と原発事故は、科学・技術が産業を中心とした地域活性化の原動力となるだけではなく、地域社会の存続を根底から脅かす巨大なリスクを生み出すものでもあることをさらけ出した。そこで、つくば研究学園都市と東海村を中心にした原子力関係事業所、研究機関が集中する地域住民を対象に、震災と原発事故後の地域社会における科学・技術や科学・技術の研究者、専門家の役割についてどのような期待や考えを持っているのかを明らかにすることを目的にして、両市在住の4000名の有権者を対象にアンケート調査を実施した。原子力の研究および原子力発電の問題も含めて、これまで一般であった、科学・技術の問題は科学者、技術者などの専門家にまかせておけば間違いはないという考え方および態度は、今回の福島第一原発事故など、科学・技術の発展自体が一般市民に巨大な危害をもたらすという歴史的経験を経て、大きく変化してきたと言える。今回の調査では、福島第一原発事故由来の放射性物質の健康影響などの問題について、行政や専門家集団などが十分な情報提供、説明を一般市民、住民に対して行ってきていないと評価していることが明らかになった。また、多くの回答者が、研究者や専門家が地域社会や地域住民とより積極的な交流や対話を行う努力をすべきであると考え、科学・技術と地域社会の関係についての建設的かつ熟慮された意見を持っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般住民を対象にしたアンケート調査は実施することができたが、女性が多数を占める生活協同組合員などの市民グループに焦点を当てたアンケート調査や個別インタビュー調査などがまだ実施できていない。ジェンダーの視点での質的調査がまだ不十分であり、その点で計画よりも遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
東海第二原発の再稼働問題を中心にして、科学・技術のあり方を問う市民の動きが震災以降顕在化しているので、震災後、放射線測定活動などを市民目線で展開してきた女性グループなどに対してインタビュー調査を実施する予定である。また、生協組合を対象にした科学・技術と市民生活についてのアンケート調査を計画し、実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたアンケート調査等について、初年度、2年目とも、研究分担者として担当していた他の科研プロジェクトでのアンケート調査実施と時期的に重なり、実施できなかったため、最終年度に実施することになり、追加調査を30年度に繰り越して実施する必要が生じたため、研究期間の延長を申請し、インタビュー調査、追加アンケート調査を実施する計画である。
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