研究課題/領域番号 |
15K03835
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
出口 泰靖 千葉大学, 文学部, 教授 (70320926)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 福祉社会学 |
研究実績の概要 |
今までの認知症に関する研究では、当事者の視点からの研究が十分に行われてこなかった。それはまず、ひとえに誰も皆が「認知症になると何もわからない、何もできない」、「自分が『認知症』の自覚がない」という認知症者像を根強く持ち続け、その偏見や固定観念が障壁になっていたからである。しかしながら近年、「認知症の当事者」として公の場で語りはじめている人たちがいる。 本研究で明らかにしたいことは、認知症当事者の語りのなかから、彼らの身におきたことは何なのか、彼らの体験世界を描き出すことにある。本研究では、実際に認知症当事者である人たちから聞き取り調査を行い、日々の暮らしのさまざまな面において、彼ら自身が試行錯誤しながらなんとか生活をこなして暮らしを成り立たせていくために工夫していることを、彼らの語りから明らかにしていく。 平成28年度では、自らの「認知症」とされる体験について、当事者本人は当事者同士でどのように語り合いたいのか、さぐってみた。そこでは「認知症カフェ」といった地域でおこなわれている場で語り合うだけではなく、ふだんの暮らしの場の中で「お茶をしながら語り合う」ことも望んでいることが見い出された。 また、自らの「認知症」とされる体験について、当事者本人は家族や支援者に対してどのように伝えたいのか、「打ち明ける」ことをめぐってさまざまな葛藤を体験していることを明らかにした。そこでは、たんなる「カミングアウト」のような「打ち明け」ではなく、自らの行いで「できること」や「むずかしくなっていること」をはじめ、望んでいることなど細やかなことを伝えられ、伝えられた相手が受けとめてくれることが重要であることが見い出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今現在までに、実際に認知症当事者である人たちから聞き取り調査を行い、日々の暮らしのさまざまな面において、彼ら自身が試行錯誤しながらなんとか生活をこなして暮らしを成り立たせていくために工夫していることを、彼らの語りからさぐることができた。 とくに、平成28年度では、自らの「認知症」とされる体験について、当事者本人は当事者同士でどのように語り合いたいのか、さぐることができた。そこでは「認知症カフェ」といった地域でおこなわれている場で語り合うだけではなく、ふだんの暮らしの場の中で「お茶をしながら語り合う」ことも望んでいることが見い出すことができた。 また、自らの「認知症」とされる体験について、当事者本人は家族や支援者に対してどのように伝えたいのか、「打ち明ける」ことをめぐってさまざまな葛藤を体験していることを明らかにした。そこでは、たんなる「カミングアウト」のような「打ち明け」ではなく、自らの行いで「できること」や「むずかしくなっていること」をはじめ、望んでいることなど細やかなことを伝えられ、伝えられた相手が受けとめてくれることが重要であることが見い出すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、さらに認知症当事者の聞き取り調査をすすめていくことで、研究目的の一つである、認知症の<はじまり期>から<深まりゆく期(深まり重くなっていく時期)>までつながりあるケアのあり方を考察していきたい。 本研究では、一人の人の「はじまり期から深まりゆく期まで」をどのように通して考えることができるのか、といった問題意識のもと、認知症をもつ人たち一人ひとりにとっての、認知症の<はじまり期>から<深まりゆく期(深まり重くなっていく時期)>までのケアのあり方を考えていく。 とくに、「認知症」とされる事態が進行していくこと、すなわち「すすみゆくこと」をどのようにとらえていけばいいか、最期をどのように迎えることがふさわしいのか、最期のあり方まで考えていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
認知症に関する図書、文献の購入や、認知症当事者やその家族、支援者に対する聞き取り調査における謝金の支払いなどの使用額が生じるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
認知症に関する図書、文献の購入や、認知症当事者やその家族、支援者に対する聞き取り調査における謝金の支払いなどの使用を行う。
|