研究課題/領域番号 |
15K03836
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
清水 洋行 千葉大学, 文学部, 准教授 (50282786)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 領域特定型中間支援組織 / サード・セクター / NPO / 地域社会 / コミュニティ・ガバナンス / 協議体 / 生活支援サービス / 介護保険 |
研究実績の概要 |
2015年4月の介護保険制度の改正に伴い、各市町村では、市町村レベル(第一層)と、生活圏レベル(第二層)に、地域課題を把握して、必要とされるサービスを検討・決定する「協議体」の設置とともに、新たな「生活支援サービス」の創出が喫緊の政策的課題となった。 この動きは、以下の点で社会学的に着目される。(1)生活支援サービスが専門的・事業的性格と市民参加とを必要とし、ハイブリッドな性格をもつものである点。(2)そのため「協議体」は、介護保険のみでなく市民活動や協働事業等に関わる多様な部局・機関・団体の参加による運営が求められることから、新たなローカル・ガバナンス、コミュニティ・ガバナンスの基盤となる可能性がある点、(3) 生活支援サービスの創出・実施に必要とされる専門知識やスキルは、事業型NPOや、それを核として形成された領域特定型中間支援組織が有しており、協議体へのそれらの関与が新たなガバナンスを生み出す鍵と考えられる点、等である。今年度は、複数の市町村における協議体について、NPOや中間支援組織の関わりに関して情報収集を行った。 領域特定型中間支援組織について日本では学術的にも政策的にもほとんど研究対象とされてこなかったが、国内での研究の展開に向けた分析視点の構築を目的とする海外調査として、オーストラリアにて、全豪ミールズ・オン・ホィールズ会議への参加による情報収集と、ミールズ・オン・ホィールズ南オーストラリア協会への訪問調査を実施した。そこで、公共サービスに関する利用者の選択を重視する政策に対応した、各地域でのボランティアによる配食サービス事業の変容と、それらに対する本部組織の中間支援について考察することができた。 これらの研究成果の一部を、地域社会学会、サード・セクターの国際学会での学会発表や研究論文ほかにて公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 協議体設置の展開過程におけるNPOや領域特定型中間支援組織の関わりについて、複数の市町村における状況を把握し、次年度以降に実施する調査の対象となる事例を選定する資料を得ることができた。 (2) 海外における領域特定型中間支援組織に関する調査については、訪問先を変更して実施した。当初はイギリスで複数の領域特定型中間支援組織を対象とする調査を計画していたが、変更後はミールズ・オン・ホィールズ南オーストラリア協会に対象を限定し、経営責任者のほか、多様な部門の職員やボランティアなどにインタビューを実施した。その結果、領域特定型中間支援組織に関する多面的な考察を行うことができ、国内の領域特定型中間支援組織を対象とする考察にとって有益な視点を得ることができた。 (3) 高齢者福祉に関する中間支援組織(領域特定型中間支援組織)に関するデータ・ベースの作成については中途であり、引き続き情報を収集する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 協議体の形成過程の調査について、今年度に把握した状況をふまえて、調査対象を絞り事例調査を進める。 (2) 国内の領域特定型中間支援組織を対象とする質問紙調査について、今年度収集した資料にもとづいて調査票の検討を行う。質問紙調査の実施に向けて、領域特定型中間支援組織のデータ・ベースの作成を進める。 (3) 海外調査について、イギリスにて、基礎自治体における一般的な参加スキームや医療保健福祉関係の参加スキームとの関係から、領域特定型中間支援組織が果たしている役割について事例調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査の対象をイギリスからオーストラリアに変更したことに伴い、英国での現地調査の調整を主に担当する計画であった連携研究者が、本年度の海外調査に同行しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
イギリスでの調査について、当初、2015年度は、全英や広域で活動している領域特定型中間支援組織を主な対象とし、2016年度はそれらが支援するフロントライン組織(現場をもつ団体)を主な対象として計画していたが、2016年度にそれらをあわせて実施するため、イギリス国内での移動の増加分や調査実施期間の延長分等にあてる。
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