本研究では、国内のローカルにおける非営利セクターの構築過程について、介護保険制度改正に伴う生活支援体制整備事業を、ローカルの非営利団体(地域組織・NPO法人・協同組合等)が参加しうる新たな意思決定の場とネットワーキングの契機として捉え、そこにかかわる各種(一般型・領域特定型・機能特定型)中間支援組織の動向について質問紙調査を通じた把握・分析を計画し情報収集を進めた。 しかしながら当事業に関する各自治体の対応について、介護保険や社会福祉に関わる既存のスキームの転用・拡大が少なくなく、現段階では、当事業を契機とする非営利セクターの再編およびそれにかかわる中間支援組織の動向の量的把握は有益でないと判断し、質問紙調査の実施を見送った。 一方で、介護保険制度の目的でもある「地域共生社会」をめぐる動きとして、各地で飛躍的に増大している「こども食堂」をはじめとする「子どもの居場所」づくりや、子どもや若い親、高齢者等を含む多世代共生の居場所づくりの動向に着目し、各種中間支援組織の働きかけとローカルにおけるネットワークの構築過程について考察を行った。 その結果、子どもの「孤食」「貧困」という新たなイッシューをめぐって、各ローカルにおいて既存の児童福祉に関わる事業間の横断性、児童福祉と高齢者福祉等の異なる政策分野間の横断性、社会福祉法人など地域社会に強く構造化されている主体と市民活動・社会起業など流態的な状況にある主体間のネットワークなどが創出されており、ローカルにおける非営利セクターの構築や既存セクターの境界の再編の契機となりつつあることがわかった。また、この境界の再編局面への着目により、非営利セクターに関する従来の静態的なアプローチに替わり、動態的なアプローチへの理論展開が、サード・セクター研究の今後の課題として見出された。
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