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2017 年度 実施状況報告書

死別による「生きづらさ」を抱える人びとに関する物語論的アプローチからの実践的研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K03838
研究機関東京学芸大学

研究代表者

水津 嘉克  東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40313283)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード死別論 / 物語論 / 排除論
研究実績の概要

現在メインのテーマとして研究を進めているのが、ピアサポート/セルフヘルプ・グループ内で語られた物語の耐久性の問題(「困難な物語」とはどのようなものか・それは克服されうるのか)である。この問題は「語る」ことと「生きづらさ」との間に生じる困難性と関連して発生するものであり、議論の一応の入口は昨年度の社会学評論の共著論文において確保したつもりである。
その後、そもそも「生きづらさ」のなかにあり・社会的に封じ込められた人達が、そもそも「語り」を再開することができるのか? 「語り」を再開するとするならばそれはどのように倫理的に担保されているのかをめぐる議論を、社会学の視点から理論的に展開することの可能性を探ってきた。しかしこの一年では議論を十分に深めることが出来ず、唯一自分自身のなかで進展を感じることが出来たのが、今年度の日本社会学会大会で行った発表とそこで得られたコメントであったというのが現状である。
そもそも本研究は、海外から移入された理論先行型の研究をなぞるだけの物語論とは差異化を図りつつ、「語り得る状態に移行すれば、諸個人が抱えている“問題”は一定の解決を迎える」というような安直な議論を乗り越え、より現場に即した実践的かつ社会学のもつオリジナリティを生かした調査・研究の可能性を追求することを大きな目標として掲げており、上記の議論を十分に深めることが出来なかったのは今年度の大きな反省点の一つである。
また今年度は調査出張(インタビュー・シンポジウムへの参加)も二回にとどまり、既存の調査結果も十分にまとめきることが出来なかったのは大きな反省点である。引き続き当事者へのインタビュー調査を続け・データを確保しつつ、データ自体の妥当性を高めていく努力が必要であると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初想定していたエフォートより学内業務に追われてしまい、結果として、調査データを十分に検討し、成果として論文の形にすることが出来なかった。
30年度の間に研究成果として練り上げていくためには、これまで得られたデータと新たに得られたデータを統合する形で分析すること、そしてこれまでバラバラに積み上げてきた研究成果を、一貫した論点と問題意識で再構成することが課題となっている。
上記の二つの作業は同時進行的に進めるべき作業であり、データ分析と理論構築の整合性を確保しつつ研究を進めているところである。

今後の研究の推進方策

上記でも述べたように、これまで得られたデータと新しく得られたデータ、そして自らのフィールドでの経験を再度精査・分析し、論文の形で積極的に発表していく。
その際に、物語論的な視点と排除論の視点を接合した視点から、「死別」によって遺された人びとの「生きづらさ」の問題を、社会学のもつオリジナルな理論的蓄積によって論じることを目標に研究を進めていく。
また当事者の人達のシンポジウムを開くなど、何らかの形で社会に研究成果を還元していくことも考えていきたい。

次年度使用額が生じた理由

先にも述べたとおり、今年度の学内業務などのエフォートが当初予想していた以上に大きくなってしまい、研究計画書上で予定していた調査・研究を履行すること出来なかったため。
残額は、引き続き調査とデータの整理、そして研究成果をまとめ上げていく作業に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 逸脱(排除対象)分析枠組みとしての「レイベリング理論」の 整理・再検討 -4- ―H. S ベッカーによる逸脱概念の認識利得とその矛盾―2018

    • 著者名/発表者名
      水津 嘉克
    • 雑誌名

      東京学芸大学紀要 人文社会科学系 Ⅱ

      巻: 69 ページ: 99-107

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 自死遺族の「語り」に対する封じ込めとは2017

    • 著者名/発表者名
      水津 嘉克
    • 学会等名
      日本社会学会大会

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公開日: 2018-12-17  

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