本研究では、自死遺族の手記やインタビューデータを用いて、死別をめぐる困難性に関する研究を進めてきた。自死遺族の場合、その経験を通常の自己物語として表明していくことに様々な困難が伴う。その困難性ゆえに、自死による死別という経験を取り込んだ「自己物語」を再度語ろうと試みる際に、「語りの難波」「経験の中断」という問題に直面することになるのである。 この「経験の中断」自体を乗り越えるには、二つの課題「中断によってバラバラになってしまった秩序を回復すること」「この中断がその後も継続していくという事実を語らねばならない」をクリアする必要がある。しかし、そこに大きなリスクが生じることも意味するのである。
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