研究課題/領域番号 |
15K03842
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
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研究分担者 |
阿部 哲也 関西医科大学, 医学部, 講師 (20411506)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報収集 / 医療社会学 / 会話分析 / 処置決定 / 質問 / 発話デザイン / プライマリケア / 精神科 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に2つの作業を行った。第一に、過去に収集した精神科診療場面のデータを本研究の目的に即して再分析した。精神科医が患者の状態について情報収集をする中で、患者の報告を言い直して確認を求める発話("formulation"; Heritage & Watson 1979)がどのように用いられているかを分析した。その結果、精神科医は患者の報告した問題を明確化したり強調したりする言い直し("problem-elaborative formulation")と、問題をより深刻でない方向に変形する言い直し("problem-resistant formulation")という、対極的な性質を持つ言い直しを用いて、後の処置決定への布石を打っていることが明らかとなった。また、患者はときにこれらの言い直しに抵抗を示すことで、精神科医が進もうとしている相互行為の方向やその先に予想される処置提案に関して、非明示的な交渉を行っていることも明らかとなった。これらの知見は、情報収集局面での相互行為が、すでに処置をめぐる予備的交渉の場として機能していることを例示している。 第二に、日本におけるプライマリケアの一種と見なすことのできる総合診療科の診療場面について、予備的なデータ収録とデータ整理を行った。現在までに約20の試験的収録を行いながら細かい調整を行い、次年度に本収録を行うための態勢を整えた。また、試験的に収録したデータの一部を書き起こし、データ検討会を通じて、次年度以降の分析において重要となる着眼点を整理した。以上により、次年度以降、精神科と総合診療科の比較分析を行う準備が基本的に整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの予備的収録が無事終了し、また既存データの予備的分析も済ませたことで、次年度以降の本格的なデータ収集と比較分析のための態勢が確立された。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の研究計画通りに、精神科と総合診療科でのデータ収集・データ整理を進め、データ検討会を活用しながらその比較分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
業者に発注したデータ整理が当初見込みよりもやや安価であったために、若干の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のデータ整理に活用する。
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