研究課題/領域番号 |
15K03842
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
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研究分担者 |
阿部 哲也 関西医科大学, 医学部, 講師 (20411506)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精神科医療 / 会話分析 / 情報収集 / 質問デザイン |
研究実績の概要 |
精神科の外来診療場面において医師が行う質問は、①患者の現在の状況を尋ねる最初の質問、②患者が報告した問題についてさらに情報収集するためのフォローアップ質問、③患者が自ら報告しない問題を調べるための探索質問に大別できる。このうち、③は大きく4種類に分かれる。a) 睡眠・食欲など健康状態に関する決まったチェックポイントに関する質問、b) 既知の問題に関する質問、c) 仕事など生活状況に関する質問、d) 不特定の心配事に関する質問である。a) とb) に関して詳細な分析を行った結果、以下のことが明らかとなった。 a) 睡眠・食事など健康状態に関する決まったチェックポイントは、「よく眠れてますか?」のように、「問題ない」という応答を選好する質問形式でなされることが圧倒的に多い。つまり、このタイプの質問は「楽観視原則」(Heritage 2002)に基づいてなされている。これに対し、b) 既知の問題に関する質問の場合は、「Xは大丈夫ですか?」のような楽観視原則に沿ったデザインとともに「Xはどうですか?」のような中立的デザインも同じくらい見出される。前者は、先行する質問に対して問題ないという応答が返ってきたあとの位置で、付加的質問であることを示しつつ用いられる傾向があるのに対し、後者は、「最近」などの時間表現を伴って、独立した新たな質問であることを示しつつ用いられる傾向が見られる。ここから、精神科医は患者が報告しない問題に関する情報を収集するとき、たんに楽観視原則に従うのではなく、連鎖的位置と共有された歴史の双方を参照して質問をデザインしていることがわかる。精神科の継続診療において、精神科医は患者が報告しない問題をたんに存在しないと見なすのではなく、存在するのに報告されていないという可能性に注意を向け、報告されていない問題を聞き出す可能性を最大化する工夫していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに収集した精神科診療場面のデータ分析を進めているとともに、総合診療科でのデータ収集およびデータ整理もおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、総合診療科のデータ分析を進め、精神科に関する分析結果と突き合わせて、研究成果を発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な物品が予定よりも若干安く購入できたため、多少の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品購入に使用する予定である。
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