本研究の目的は、2001年より研究を継続している「沖縄社会に内包されるディアスポラ」の中から「南米系日系人」 に的を絞って、彼らがホスト社会とどのような関係を築いているのかを分析することにある。沖縄社会は多文化化が進行しているにもかかわらず、異文化を持った人々がそのハビトゥスを表出しにくいのが現状であるが(安藤・鈴木・野入、2007)、日系人は結束的な(=異なるハビトゥスを許容しにくい)沖縄社会に入り込める資源(ルーツの共有)を持っている場合がほとんどであるが、彼らがどのような文化戦略を用いてホスト社会での認知を得ているのかを、文化資本に基づくネットワーキングやその継承についての分析を通して明らかにすることを目指している。 以上の問題意識に基づく調査の結果、本調査での対象者は、日本とりわけ沖縄在住歴が長く、沖縄社会に根を下ろしていることが明らかになった。自らのルーツへの関心を契機として成人後に移住してきたケースが多く、移住直後は結束的なホスト社会沖縄の親族が定着をサポートしているが、その後は親族関係に留まらず仕事や育児・遊びを通して幅広いネットワークを築き、最近ではSNSを用いて架橋的な役割を果たしていること、文化資本の継承については公的な側面では困難であるが、私的な部分で日系人としての意識づけがなされていることが明らかになった。そして現在の仕事やこれまでの職歴、SNSの分析から、ラテンアメリカ文化資本が架橋的社会関係資本となって結束的な沖縄社会とつながり、出身国とつながり、場合によっては米軍基地文化や海外のネットワークともつながっているといえる。 最終年度においては、研究成果を用いた論文が査読誌に掲載された他、成果報告書として『ホスト社会沖縄と南米系日系人:文化資本に基づくネットワーキングとその継承』(鈴木規之・崎濱佳代、琉球大学法文学部、2018年3月)を刊行した。
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