研究課題/領域番号 |
15K03849
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
原 俊彦 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (00208654)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地方創生 / GIS / 未婚 / 出生力 / 大学進学率 / 就職移動 / 北海道 / 札幌市 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、喫緊の課題である「≪地方創生≫の政策効果」に焦点を合わせ、2015年に国勢調査結果や人口動態統計、文部科学省の学校基本統計などを用いて「全国(または都道府県)」、「大都市部(東京区部+政令指定都市)」、「地方部(それ以外)」に分け、2010年から2015年の直近の人口動向を分析した。その結果、過去5年間に30歳以上の高年齢での結婚・出産が著しく増加する一方、29歳以下の若い年齢層では引き続き結婚・出産が減少、進学・就職流出も増加し、≪地方創生≫がめざす東京一極集中の是正や地方における就業機会の創出につながるような傾向は全く見られず、政策効果は確認できないことが明らかとなった。 また近年急速に増加する外国人人口の流入が地域社会に与える影響についても、北海道、札幌市を中心に分析を進めた。その結果、一部の自治体で外国人観光客の増加や一般世帯に占める外国人世帯の割合の上昇などの動きは見られるが、地元への経済効果や就業機会創出効果は殆どなく、転入する外国人の平均賃金が低い場合には1人あたり平均所得の低下に繋がる可能性があることが確認できた。 また、昨年度から立ち上げたGIS(地理情報システム)研究会を9回にわたり開催し、同研究会のメンバーの協力を得て、北海道・札幌市の最新の人口動向(高齢者の移動、外国人人口の増加、住宅開発やエネルギー消費動向など)を検討し、AI(人工知能)の活用可能性やGISによる地理的イメージの創出方法について議論を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も①北海道・札幌市を対象に人口学的要因(出生・死亡・移動)とそれらが社会・経済・生活基盤に与える影響を分析し、②人口減少過程の基本的メカニズムをシステム・ダイナミック・モデルで記述、③札幌市についてはGIS(地理情報システム)を活用し、地理的分布の予備的分析を行う計画であった。しかし、①については、引き続き地方創生との関係で結婚・出生への影響要因や北海道・札幌市の将来動向(地方創生や外国人人口の流入効果)の分析が中心となり、過去の変動や社会・経済・生活基盤に与える影響については踏み込むことができなかった。また②のシステム・ダイナミック・モデルの開発は、新バージョンのリリースが秋までずれ込み、入手のタイミングも遅れ、ソフトウエア上の隘路(多次元データ処理)が解決されず殆ど進捗しなかった。③についても、GISプログラムの開発支援者が確保できず、シミュレーション結果(エクセル・データ)をGISに自動的に転記するプログラムの開発には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①については、過去に研究者が開発した過疎化への政策対応モデルをベースに、その修正・移植に分析の焦点を絞り、社会・経済・生活基盤に与える影響をシミュレーションする。 ②のシステム・ダイナミック・モデルの開発についても、年度末にようやく入手した新バージョンのstellaを活用し、国立社会保障・人口問題研究所の推計と整合性のあるプロトタイプの人口モデルを早急に開発し、推計結果を再現するとともに、過去に開発した「過疎化のシステム・ダイナミックスモデル」のプログラムを元に、追加的に人口学的要因が社会・経済・生活基盤に与える影響を修正・補足することで、スピードアップし年度内の完成をめざす。 ③については、あらためてGISプログラムの開発支援者に請負業務として発注し、専門家の助力を得てシミュレーション結果(エクセル・データ)をGISに自動的に転記するプログラムを開発する。なお、国立社会保障・人口問題研究所の新人口推計は、平成29年4月にようやく全国推計が公表された段階であり、このペースでは地域人口推計の公表は、さらに30年度にずれ込む可能性が高く、システム・ダイナミック・モデルの推計結果と新人口推計との比較は、今年度内には実現しない見通しである。その場合、2015年度の国勢調査結果のGISデータの公表が間に合えば、システム・ダイナミック・モデルを2010年を初年とするシミュレーションを行い、モデル精度の確認を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入が予定より安価で購入できたため、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
GISプログラムの開発支援者への請負業務費に使用する。
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