北海道・札幌市を対象に1)過去・現在・未来(国立社会保障・人口問題研究所の地域推計)について人口学的要因(出生・死亡・移動)とそれらが社会・経済・生活基盤に与える影響について分析する。2)人口減少過程の基本的なメカニズムをシステム・ダイナミック・モデルの形で記述する。3)GIS(地理情報システム)を活用し、シミレーション結果の投影を行い地理的分布の変化を明らかにする。これらを通じ、人口減少社会への対応について政策シミュレーションが可能なシステムの構築をめざしている。 最終年度は、喫緊の課題である「人口減少社会に対する政策科学的アプローチ」に焦点を合わせ、2017年4月に発表された日本の将来推計人口(平成29年推計)をもとに国政レベルでの人口減少社会への取り組みについて政策科学的アプローチからの分析を行い、GIS(地理情報システム)やAI(人工知能)の活用を通じ地域社会の将来を俯瞰することの重要性を論文として発表した。また『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』に合わせ、推計結果の地理的分布への投影方法の検討・改良を進め、地域人口に代え、コーホート変動数(人口移動数)のシェアを用いるコーホート変動数シェアトレンド法を開発し、地域における人口移動の地理的な偏在性が明らかとなった。 一方、この新しい投影方法の検討を通じ、人口減少過程を再現するシステム・ダイナミック・モデルの構造が従来のマクロモデル単体の形では地理的投影との連動性に欠けることが明らかとなり、年齢階層別移動数に対し強いインパクトを持つ、進学・就職移動、家族形成期移動、高齢者の施設移動に的を絞るとともに、マクロレベルの変動と地理的分布の変動の相互作用の解明を進めるという新たな展望を得た。今後は本研究を機会に発足した札幌GIS研究会の共同研究プロジェクトとして、その実現をめざす。
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