研究課題/領域番号 |
15K03851
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山本 薫子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (70335777)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 都市下層地域 / 社会的包摂 / 社会的排除 / バンクーバー / 寿町 / ジェントリフィケーション / 社会企業 / 住民運動 |
研究実績の概要 |
2016年度は、横浜・寿町、バンクーバー・DTES地区において課題に基づいて現地調査を実施し、その結果の分析を進めた。 生活保護受給者がすでに住民の8割以上を占め、地域全体で社会福祉のニーズが高まっている横浜・寿町では、住民生活の現況、地域活動団体の取り組み、行政施策のそれぞれの展開およびそこでの課題を把握した。さらに、地域内の労働福祉センターの建て替え工事に伴う地域の住民生活、地域活動、主に福祉系の事業所をめぐる変化とそれに対する対応についても現況を把握した。横浜では、地域の夏祭り期間、年末年始の「越冬活動」期間に集中的に現地調査を行った(ヒヤリング、参与観察等)。 また、大阪・釜ヶ崎、東京・山谷においても現地視察と資料収集を行なった。釜ヶ崎ではまちづくりの展開過程とそこでの地域組織の活動内容に関する知見を深めた。山谷では、地域支援団体の活動とその変遷を中心に状況を把握した。 バンクーバー・DTES地区では2016年9月、2017年2月にヒヤリング、参与観察を中心とした現地調査をそれぞれ2週間程度ずつ実施した。それによって、都市下層地域でのジェントリフィケーション進展とそれに伴う地域課題の現況を把握し、さらに低所得者をめぐる居住不安定の問題とそれに対する住民運動の取り組みについても資料収集を行なった。さらに、行政や地域経済団体を中心とした地域経済活性の施策についても資料収集を行い、社会企業を中心とした地域での新たなビジネス展開に関してもヒヤリング等を実施することで現況を把握した。 これらの調査結果をまとめ、分析した成果を国内学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は、横浜・寿町、バンクーバー・DTES地区において現地調査に基づく資料収集をおおむね、計画通りに進めることができた。特に、バンクーバーでは通算で1ヶ月程度の現地滞在調査を行うことで、より詳細な現地の状況を把握することができた。 横浜においても、まちづくりや大規模な地域内施設の建て替えという地域変化の変遷、過程について現地調査に基づいて把握することができ、ほぼ計画通りに進めることができた。また、大阪、東京の都市下層地域についても現地視察と資料収集を行うことで、現況とそこでの課題について知見を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度、2016年度に実施した調査結果について課題で設定した枠組みに基づいて分析を行う。まず、横浜、バンクーバーの双方において、現代の先進国における都市下層地域の福祉化をめぐる現況とそこでの社会課題について、特に住民生活を中心として変遷を明らかにし、課題を抽出する。そして、それらについて、行政による支援プログラム、市民団体による支援活動を中心に社会的包摂、社会的排除の2つの論点から整理する。特に、バンクーバーにおいてはジェントリフィケーションの進展、新たな経済活性の進展が低所得者層とその生活に及ぼす影響を批判的に検討する。横浜については、国内の他の2地域(大阪、東京)とも比較しながら、都市下層地域における生活保護受給者の定住化と生活困窮者に対する支援拠点として再整備されていく過程を明らかにし、それにともなう社会変化が都市に及ぼす影響と課題について検討する。 適宜、追加調査を実施しながら分析結果のまとめを行う。
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