研究実績の概要 |
本研究では、現代日本社会における「伝統的」とされる祭礼とその担い手集団について、戦後における地域の階層構造の変化や近年の人口減少を背景としつつ、それまでなかった他出者や女子の祭礼・芸能への参加、外部からの新規参入、観光客誘致、文化財行政やユネスコ無形文化遺産指定といった社会的な価値づけ、また祭礼への外部からの視線に対する担い手側の祭り自体への再帰的な意識の高まりの中で、いかに祭礼とその担い手集団が再編成されるのか研究を行っている。 平成27年度は、滋賀県竜王町の苗村神社三十三年式年大祭・長浜市の長浜曳山祭についての研究を行った。平成27年に行われた式年大祭の追加調査を行い、33年に1度しか行われない祭礼において、人口の減少やそれにともなう他出者・女子の参加、また映像記録などのメディアの活用や現在の住民のリアリティ、また集合的な記憶を通じていかに芸能が再編成されたかについて明らかにした。成果は滋賀県立大学人間文化学部,2015,『苗村神社三十三年式年大祭調査報告書』(竜王町教育委員会)の分担執筆、および武田俊輔(編著)・滋賀県立大学式年大祭調査団,2016,『世代をつなぐ竜王の祭り 苗村神社三十三年式年大祭』(サンライズ出版)として刊行した。 長浜曳山祭については、伝統的な町内の外部からの参加にともなう祭礼の変化、ユネスコ無形文化遺産指定をめぐる動き、祭礼組織内のコンフリクトや資金を調達する社会的ネットワーク、戦後の祭礼組織の再編成について調査を行った。成果の一部は武田俊輔,2016,「都市祭礼の継承戦略に関する歴史社会学的研究 長浜曳山祭における社会的文脈の活用と意味づけの再編成」野上元・小林多寿子(編著)『歴史と向き合う社会学 資料・表象・経験』(ミネルヴァ書房)として刊行、また日本生活学会・日本都市社会学会・日本社会学会で報告し、28年度に3報の査読論文が刊行される。
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