本年度のおもな研究成果は次の3点である。 第一に、大宅壮一(1900-1970)のライフヒストリーを論じた拙稿「大宅壮一――ふたつの大衆社会化状況を生きた、「無思想」の「マスコミの王様」」が収録された、土屋礼子・井川充雄編『近代日本メディア人物誌――ジャーナリスト編』が2018年1月にミネルヴァ書房より刊行された。大宅についてはこのほか、2017年10月に東国大学で開かれた第5回「東アジアと同時代日本語文学フォーラム」2017ソウル大会、2018年3月に桜美林大学で開かれた一般財団法人アジア・ユーラシア総合研究所「第1回一般研究者・客員研究員研究発表会」において口頭発表をおこなった。 第二に、大宅に対する理解を深めるべく、大宅が活躍した背景となる、1950年代のジャーナリズムについて、研究をおこなった。具体的には、影山三郎(1911-1992)によって『朝日新聞』に戦後設けられた女性専用投書欄「ひととき」への「女中」の投稿がきっかけとなり1954年に結成された「女中」のサークル「希交会」の機関誌『あさつゆ』ならびに関連資料を復刻した、『高度成長期の〈女中〉サークル誌――希交会『あさつゆ』』全10巻(金沢文圃閣)の刊行を開始した。 第三に、大宅に対する理解を深めるべく、大宅が活躍した背景となる、1950年代の出版文化について調査をおこなった。その知見の一部を、拙稿「1950年代における雑誌『明星』の連載小説とそのメディアタイアップ展開(付・1950年代『明星』連載小説一覧)」として、『大衆文化』第18号(立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター)において発表した。また、関連する内容について、『週刊読書人』2017年10月6日号・10月13日号・10月20日号において、「創刊65周年『明星』連載文芸作品をよむ」と題した短期集中連載をおこない、研究成果を広く社会に伝えた。
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