研究実績の概要 |
(1)既存統計を活用した伝統的技能職者数の変動分析は、まだ数量的処理を進めている段階であり、十分な知見は得られていない。ここでは酒造業に関してだけ示しておきたい。国勢調査における職業小分類では、「酒類製造工」が昭和65(1985)年14,057人から平成7(1995)年16,523人に増加し、「酒類製造作業者」の新分類となった平成12(2000)年では17,234人、平成17(2005)年では16,777人であり、減少を示した。小分類では酒造業の伝統的技能職者の動向を把握することはできないが、清酒製造については、日本酒造組合連合会の会員数で概ねの動向をみることができる。平成10(1998)年に全会員6,142人(杜氏1,387人、三役1,597人、一般会員3,158人)であったが、平成27(2015)には4,881人となり、17年で約1,200人減少した。杜氏だけでは684人の減少、杜氏を補佐する三役では1,387人の減少を示した。季節労働として清酒製造を担ってきた蔵人の消滅傾向と高齢化が着実に進んでいる。またそれは酒造の機械化等の合理化が進展している結果でもある。 (2)伝統的技能職従事者の学歴・専攻分野の分析では、伝統的技能職従事者においても高学歴化が進んでいることを明らかにしようとした。本分析もデータの収集を進めている段階であり、十分な知見は得られていないが、酒造業に関わる事項だけを示しておきたい。酒造における蔵人(杜氏や三役など)の減少や機械化よる四季醸造は、若い社員技術者による酒造を推進することとなった。若い社員は主として大学卒であり、高学歴化を反映している。しかし、従事する職とは直接関わりのない分野を専攻した者が大半であり、正規雇用の中で技術を獲得し、杜氏の称号を得ている。以前、聴き取りを行ったT杜氏組合の社員杜氏は19人であり、その多くが大卒であった。
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