補助事業期間延長とした平成30年度は、助成事業の3年間の資料収集とアンケート調査、聞き取り調査の結果を整理し、研究成果としていくつかの知見を得ることができた。その一部を学会で発表するとともに審査論文として投稿した。特に、杜氏組合における聴き取り調査の結果を踏まえ、それぞれの地方都市が直面してきた産業構造や雇用環境の変化が杜氏をはじめとする酒造工程従事者や杜氏組合にどのような変化をもたらしたのかということについて検討した。加えて、組合員数の経年による増減の変化から、減少型、増加型、維持型に区分し、その中でも減少型に分類された3つの組合、すなわち、会員数の減少には一定の危機感を持ちながらも、伝統を守ることを重視している1組合と、解散または解散を決定した2つの組合の元幹部に対する聴き取り調査の結果から意志決定のプロセスをまとめた。 さらに、地方都市においては、入職者の拡大を阻害する要因としてのみならず、組合員自身の働き方の転換を促すほどの産業・雇用環境の変化が進んでいる地域もあり、杜氏組合が果たすべき役割や期待、組合としての戦略などにも組合ごとの特色を確認できた。例えば、独自の称号授与の取り組みや、N酒造技術研究会の「外部研修を受講するための支援」、「女性従業員を対象とした講習会」といった特色ある取り組みである。また、平成の年代に入ってから設立された比較的新しい杜氏組合もあり(会津、下野、富山、大和(奈良)、大津(山口)の杜氏組合など)、決して減少だけではない変化も広がりつつあることも提示した。
|