研究課題/領域番号 |
15K03860
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
恩田 守雄 流通経済大学, 社会学部, 教授 (00254897)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゴトン・ヨロン(相互扶助) / アリサン(小口金融) / ザカート(イスラム教の喜捨) / プニア(ヒンズー教の喜捨) |
研究実績の概要 |
平成28年度の目標は日本とインドネシアの互助行為及び制度の比較検討であった。8月には東ジャワのマドゥーラ島の農村と漁村、シドアルジョの農村、マランの農村で、また29年3月にはバリ島のギャニャール県を中心に農村と漁村、クルンクン県の漁村、タバナン県の農村で聞き取り調査をした。その結果前半の調査では日本の共同作業に相当するググル・グヌン(gugur gunung)やケリア・バクティ(keria bakti)、冠婚葬祭の手助けではメンバンツゥ(membantu)やメノロン(menolong)、また小口金融の頼母子にあたるアリサン(arisan)の言葉とその行為について知ることができた。後半の調査では同様に日本のユイに相当するサリン・ツルンガン(saling tulungan)、冠婚葬祭の手助けでメディロカン(medelokan)やメアバン・アバン(meaban-aban)、アリサンについて日本と比較した。おおむね互酬、再分配、支援(援助)の3分類に分けて互助行為を捉えることができる。 一般に東ジャワではゴトン・ヨロン、バリ島ではサリン・ツルンガンやサリン・メトゥルガン(saling metulungan)という相互扶助の言葉が使われる。末端の行政組織としてRT(Rukun Tetangga)とRW(Rukun Warga)があるが、日本の隣組の遺制でもあるRTが近隣互助組織としてゴトン・ヨロンの単位とされる。なおイスラム教では救貧税として義務的な性格(制度喜捨)が強いザカート(zakat)、ヒンズー教では自由意志による寺に寄付するプニア(punia)があり、不特定多数の貧困者を対象にした互助行為が見られる。近代化に伴い互助慣行は衰退しつつあるが、地方の農村や島ではまだ守られている。この点アリサンはコーランが禁じていることもあるが利息がつかない仕組みで共済と親睦の目的でされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に推移しているが、現地調査は当初の予定どおりできたものの日本での資料収集が十分ではなかった。次年度以降タイの互助慣行の研究とともにあわせて日本との比較研究を進める予定である。なお昨年度の研究成果として、フィリピンの互助慣行について論文(本務校紀要)と学会(日本社会学会)で報告することができた。また関連する互助ネットワークに着目した東日本大震災に関わる調査内容を国際学会でセッション・オーガナイザーを勤め発表した(Third ISA (International Sociological Association) Forum of Sociology)。さらに社会学全体の分析視点とその応用をまとめた著書を刊行した(『医学生のための社会学入門』)。本年度研究のインドネシアの互助慣行は大学の紀要論文にまとめ学会で報告する予定である。この研究成果は当該年度ではなく、次年度の論文掲載と大会発表となり半年のずれが生じる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29(2017)年度は日本とタイの互助行為及び制度について比較研究するが、8月と翌年の3月にローン・ケーク(労力交換)などの互助慣行について現地調査を予定している。その後はヒアリングのまとめと日本での資料の精査を通して、日本とタイの比較また制度の普遍性と固有性について検討する。その研究成果は本務校紀要に投稿し学会で報告する。
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