本研究においては、人口減少が進みつつある今日の状況を踏まえて、地域価値向上に向けて地域メディアが果たしうる役割に関して考察を行った。これまで地域メディアの役割は地域住民のニーズによって規定されてきたが、今後は地域メディア自身が地域振興の主体となり、地域の発展に結びつくのではないかとの問題意識の元、資料調査、現地調査を行い、比較分析を行った。 本研究における地域価値については、先行研究を踏まえて、経済的価値に限定せず、「地域の持続性を向上させること」を目的として、経済、環境、自然、人等の多様な価値を含むこととし、価値の創造で終わるのでなく、価値の伝達・提供まで目標とすべきものであると設定した。 複数事例の調査を行ったが、例えば、ハッピーロード大山商店街(板橋区)におけるインターネットを活用した地域の動画放送番組である「ハッピーロード大山TV」の取り組みでは、商店街内外のキーパーソンを軸として、継続的に商店街の情報を発信することで、地域価値を高めるためのコミュニケーションと情報の還流に寄与していることが明らかになった。また、FMよみたんや明石ケーブルテレビ等におけるメディアと住民との連携では、メディア側が住民と対等な関係での連携を意識しつつ、住民が継続して参加しやすい仕組みを構築することで、定着に至っていることが明らかになった。すなわち、住民との関係性の構築により、メディア自らの価値を高めることに繋がり、ひいては地域価値向上に資することとなると考えられる。 以上を踏まえると、今日の地域メディアは、地域情報の送り手としての活動のみならず、地域振興の主要な担い手となっており、地域価値の創造及び伝達・提供に対して多様な役割を果たしている。特に、①地域資源の発掘・再発見、②メディアを通じた地域内外の関係性の構築・拡大、③外部からの情報の還流等において果たす役割が大きいことが明らかになった。
|