第一に社会改革を断行してきた福音派左派の成立過程に関する神学的・宗教社会学的研究を行った。アズベリー大学のD・シュワーツ教授に面談し、神学・宗教的には保守派であっても、政治的にはリベラル派に属し、民主党を支持する福音派左派の誕生までの歴史的経緯に関してき取り調査を行った。また、エヴァンジェリカル・ソーシャル・アクションを主宰するイースタン大学のロン・サイダー教授から聞き取り調査を行った。第二に、ドュリュー大学のパット・カーンズ教授、ニューヨーク大学のマルシア・パリー教授への聞き取り調査を行い、環境保護問題に関する宗教右派団体と福音派左派団体対立構造の概要を把握した。第三に、環境問題に取り組む3つの団体、(1)全米最大の福音派団体である全米福音派連盟(NAE)、(2)福音派左派の福音派環境ネットワーク(EEN)、および、これらに対立する(3)宗教右派(保守派)のコーンウォール・アライエンス・フォー・スチュワードシップ・オブ・クリエーション(CASC)に関する組織論的研究を試み、対立関係を実証的に明確にした。第四に、CASCの組織論的研究では、共和党、フォーカス・オンザ・ファミリーなどの宗教右派団体やヘリテージ財団(レーガン保守政権のシンクタンク)との関係を調査する試みは、CASCのベイスナー博士から回答は得ることが出来ず、とん挫した。また、当初は環境保護の草の根的運動に注目する予定であったが、ネットワークは濃密かつ継続的なものではなく、緩やかで非継続的であることが判明し、この点も、方針転換し、福音派左派団体と宗教右派団体による地球環境保護問題への取り組みに関する宗教社会学的研究に留まった。 本研究の成果は、「米国福音派による環境保護運動:その現状と課題」と題して、『地球システム・倫理学会会報』No.12、2017(112-117頁)に掲載された。
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