研究課題/領域番号 |
15K03865
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮垣 元 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (40340905)
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研究分担者 |
鈴木 純 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (40283858)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非営利組織 / 震災 / コミュニティ |
研究実績の概要 |
「ボランティア元年」とされる阪神・淡路大震災(1995年)の前後より今日に至る過程で、民間非営利組織(以下、NPO)と地域コミュニティがどのように相互作用し、組織や活動が形成されてきたのかを跡づける点に本研究の基本的な問題関心がある。地縁的な関係とNPOの相互作用の効果、地域関連施策の与える影響、NPOなどの中間集団のネットワーク形成過程などを明らかにすることは、同じ国の制度下にあって「なぜ地域によりNPOの特性が異なるのか」という問いに対して、関係論・相互作用論的な説明の導出につながる。 本年度は、昨年度実施した被災地域を含む兵庫県全NPOを対象とする調査(有効回収数569)の分析を進めた。本調査は、組織や活動に関する基本的なプロフィールに加え、組織内外のネットワーク状況について訊ねており、ネットワーク構造と組織特性の関連を導きうるものとなっている。この分析を行った上、研究チームによる研究会での検討を経て、学会発表、ラウンドテーブルを行った。成果については現在査読中で、さらに今後も研究成果を発表する予定である。 さらに、年度後半においては、上記との比較の観点から、神奈川県のNPO法人全数を対象に同様の調査を共同で実施した。基本的な調査設計を継承するとともに、前回の結果も踏まえて新しい調査項目も設定し、当該分野の組織調査としてより精度の高いものになっている。調査実施は年度内に終了し、次年度にデータクリーニングやアフターコーディングを施した後、分析を行い、学会発表などでその成果を問う予定にしている。 以上の検討・研究発表の場として「社会ネットワークと非営利組織ワークショップ」を共催で行った。また、社会学(社会ネットワーク論、社会運動論、福祉社会学等)、経済学(公共経済学、経済政策論等)の検討から理論枠組みの精査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概ね実施計画通り進捗していることに加え、昨年度実施の調査が一定の規模で行えたため、その分析に多様な観点を持ち込むことができた。とくに、研究会への若手研究者の参加があることで、当初よりも分析枠組みが広がり、新たな視点を取り込むことができた。学会、ラウンドテーブルでの発表、査読誌への投稿などにつながった。こうしたことを受け、次年度より研究分担者を増員する予定となっている。 さらに、共同で実施した神奈川県調査においては、当地の中間支援組織との調査実施体制を構築することができ、加えて神奈川県の調査協力を得られたことで、当該分野の調査としては高い回収率につながった。地域の関心の高さを示すとともに、調査研究の重要性や実施方法の理解に寄与したと考えられる。本調査を契機に研究ネットワークのさらなる広がりも考えられ、直接的な成果とは別に、中長期的な展開の可能性が見出されたことは大きな進展と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず第一に、昨年度実施完了した神奈川県NPO調査の分析準備を行う必要がある。本年度前半ではクリーニングや基礎集計を行い、それに基づく研究会を開催し、分析の方針を検討、実施する。 第二に、昨年度までに実施した兵庫県調査の分析を継続して行い、9月の学会発表を予定している。その後に、兵庫、神奈川の調査結果の比較を行う予定にしている。 あわせて、継続している社会学と経済学の理論統合による理論枠組みの精査も行うとともに、歴史的経緯に関する資料の収集とその分析に基づく質的研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね実施計画通りに進捗していると考えるが、実際の調査実施の経費や研究会開催場所に応じて弾力的に支出した。また、本年度は物品の購入が必要となくなったため、次年度以降に使用することとした。
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