研究課題/領域番号 |
15K03868
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
永野 由紀子 専修大学, 人間科学部, 教授 (30237549)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農村社会学 / バリ島 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究の初年度として、研究テーマに関わる統計資料や文献の収集を行うと同時に、インドネシアと日本の文化や社会に関するヨーロッパの研究会やゼミナールに参加し、最新の研究動向を把握するとともに、本研究の課題が、海外の学界のなかでどのように位置づけられるのかについて考察した。その結果、以下のことが明らかにされ、本研究の学術的意義が明確になった。 1.インドネシア研究は、ライデン大学を中心にかつての宗主国オランダに歴史的資料が集積している。バリのスバックの研究も灌漑事業が盛んなオランダで盛んである。だが近年は、アメリカとオーストラリアで社会人類学や社会学の領域の研究成果が多く、バリ農村の社会組織についてのすぐれた事例研究もみいだされる。2.華僑と並んで東南アジア社会に多い中東からの移民は、ハドラミといわれる現ヨルダン国に近い特定のエリアの出身者が多い。3.近年のバリ島のツーリズムのなかで強調されるトリヒタカラナが、伝統文化ではなく、つくられた文化であることが強調されている。こうした研究の視点は、近年に特徴的なことではなく、社会人類学における構築主義のなかででてきたものである。4.歴史的には、スカルノが失脚しスハルト政権が発足するきかっけになったクーデター未遂事件が、ポストスハルト期で50年にあたる2015年は盛んにおこなわれていた。5.こうした国際学会の傾向を鑑みると、日本の東南アジア研究の水準は高く、海外の研究動向もふまえて日本の東南アジア研究の成果を内外に問う意味は大きい。さらに、日本でも欧州でも、本研究のように、日本の水田稲作を生活条件としながら展開してきた村落組織や家族組織についての農村社会学の研究蓄積をいかした東南アジア研究やインドネシア・バリ島の事例研究は皆無であり、本研究の意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に関する文献研究や資料収集・資料の整理と分析については、研究計画どおりに進展している。現地調査については、日本農村の調査が十分にできたとはいえないが、研究動向の把握と位置づけが計画以上に進展したために本年度に実施する現地調査の課題が明確になり、円滑に現地調査ができる準備が整ったので、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的に関する文献・資料の収集と分析を継続するとともに、インドネシア・バリ島および日本の農村について現地調査を実施し、特定村落についてのインテンシブな事例研究を行う。
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