研究課題/領域番号 |
15K03869
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
関 いずみ 東海大学, 海洋学部, 教授 (20554413)
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研究分担者 |
後藤 雪絵 松蔭大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70551365)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 地域コミュニティの存続 / ソーシャルキャピタル / 高齢者支援 / 地域における女性の役割 / 外部支援 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、①被災地域(宮城県、岩手県)における人口変動の把握、②既存調査研究より、被災地域のコミュニティに関する問題点の整理、③震災前後のコミュニティの変化や現在の状況の把握、④地域コミュニティ支援に係る活動実態、について調査研究を実施した。 これまでの調査から、漁村コミュニティの密な人間関係は、高齢者支援をはじめ地域生活を支える上で、強みとなっていることを考察してきた。しかし、現在多くの地域において担い手が地域外に流出する傾向がみられる。東日本大震災は岩手県、宮城県、福島県のとりわけ沿岸地域の人口を一時急激に減少させた。その後、地区によっては流出傾向が収まってきている所もある。しかし、被害が大きかった地域は復興の速度も鈍く、就業機会にも恵まれないといった悪条件が重なる傾向にあり、地域間の格差が今後ますます顕著になっていくことも考えられる。 このような地域では、社会的な関係性(ソーシャルキャピタル)の修復がより困難な状況にあり、漁村コミュニティそのものの存続を危うくしている。震災後5年が経過する中で、これまで地域が培ってきた互助の仕組みをどう修復していくかということは今後の復興の鍵ともいえる。今年度は宮城県気仙沼市を対象として、震災前後の地区内の互助的仕組みの変化や震災後に入ってきた外部支援の役割について現地において聞取り調査を行った。また、気仙沼の唐桑地区の漁協女性部と岩手県大槌町の漁協女性部の震災後の活動状況を比較し、被災の実態や復興状況がコミュニティに及ぼす影響の一端を具体的に捉えた。 また、長崎県対馬市上対馬地区において新たに立ち上がった、地域住民による高齢者支援活動の経緯や実態について現地調査し、今後被災地において互助的活動が復活するためのきっかけをどこに求めることができるか、ということについて研究分担者、外部集落支援員、活動の実践者らと意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の被災地域について、人口推移のデータや被害状況、復興実態によってある程度特徴的なタイプを抽出することができた。また、先行研究や前回の科研費調査より、漁村地域における高齢者問題について整理し、被災地においてはさらにどのような課題が付加されているのかということを仮定することができた。 現地調査については計画通り実施した。現地では、外からの視点(外部からの支援者)、行政からの視点(市役所の各部署)、地域の中からの視点(漁業者、地域住民、女性)といった様々な立場からの話を収集することができ、事実関係など照会しながら調査結果のとりまとめを行うことができた。 当初計画していた研究会の開催については、現地調査時に実施したが、十分ではなかったため、平成28年度に複数回の実施を計画する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、事例調査及びその分析を進め、被災地における高齢者の生活における問題点や課題の抽出、地域コミュニティ再生の新たな動きの掘り起こしを行う。調査地は、これまで現地調査を続けてきた宮城県(主に気仙沼市)、岩手県(主に大槌町)を対象地区として、復興の進捗や時間の経過によって生じてくる問題点、あるいは新しい動きなどについて追跡調査をしていきたいと考えている。 研究会の開催については、3回の実施を計画している。「外部支援と地域振興」、「健康と地域コミュニティ」、「漁村地域(特に被災地を意識)の今後のあり方」というテーマで専門家や実践者を招聘し、当方の調査報告も交えながら実施する。
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