研究課題/領域番号 |
15K03871
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
鈴木 規子 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50610151)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | EU市民権 / BREXIT / EU域内移民 / イギリス国民投票 |
研究実績の概要 |
本研究ではEU市民権が制定されてから20年が経過して、どれだけEU市民権が広まっているのか、EUに対して加盟国市民がどのような意識や感情を抱いているのか明らかにすることが目的である。 2016年には、6月イギリスにおいてEUからの離脱を問う国民投票が実施されて、その結果、離脱を支持する声が過半数を占めた。こうしてヨーロッパ統合史上初めて加盟国が離脱する事態となった。そのため、国民投票実施の前後から国民投票に関する講演会に精力的に参加してイギリスのEU離脱に関する情報収集に努めた。 EU離脱を支持する者の間には、EU域内を自由に移動してイギリスへやってきた東欧からの移民の大量流入に対して規制することができることを望む声が多く、判断の際の大きな要因となった。このことから、EUを離脱する背景にはイギリス国民の間にEUに対する反感や、EU市民権が保証するEU市民の権利への拒否感が現れたことがわかった。こうしてイギリスとEUの関係について理解が深まった。 さらに、研究計画ではこれまで調査対象地としてきたフランスに居住するイギリス人について、EU市民権の行使の中でも国民的市民権と最も異なる超国民国家的市民権の一つと考えられる地方参政権の付与に関連して、居住地で市議になった外国籍住民への調査を予定していた。しかしながら、イギリス人市議には一人しか会えなかったため、市議ではないがフランスに居住して働いているイギリス人への調査に切り替えて、3月下旬にフランスを訪問してEU市民意識およびイギリスのEU離脱に対する意識調査を実施してきた。その結果をまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初フランス在住ポルトガル人への意識調査もイギリス人への調査と並行して行う予定であったが、Brexitおよびその反応について調査対象を絞ることによって、EUから離脱するという状況の変化と、EU市民権の否定的な受け止め方の現れの現象をより明らかにできると考えた。 また、フランス在住のイギリス人市議に対する大規模のアンケート調査を予定していたが、実際にイギリス国籍の市議に複数出会うことが困難であることが分かったので、フランス在住で働いたり生活したりしているイギリス人全般に対象を広げたのだが、それによってEUに対してより多様な考え方をもつ傾向をとらえることが可能になった。 以上のように、現状の変化に応じて調査方法や対象を変更したものの、おおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
フランスに居住しているイギリス人が多いのが南仏であることが分かったので、現地調査の対象に加えて意識調査を実施することを予定している。 昨年以来、ヨーロッパでは移民排斥と反EUを訴える極右政党が支持を広げ、ポピュリズムと呼ばれる現象が各地で起こっている。その一つであるフランスでも5月に大統領選挙が実施される予定で、世論調査では極右政党が予想以上に支持を広げていることから、現地調査を行って、ポピュリズムと反EUの関係についても明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月25日から4月2日までフランス調査を行ったため、その旅費の支払いの締切りが年度内に間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
3月下旬に実施した旅費分をすべて次年度予算で執行。
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