本研究では、EU市民の間で移動の権利などEU市民権の行使が一般的になる一方、EU市民権を行使してやってくる移民に対する不満などが国内政治に影響を与える状況が頻繁にみられるようになっていることから、EU市民権のパラドクスとして実態を研究した。とくに2016年にイギリスの国民投票でEU離脱を選択した理由の一つとして、EU域内移民の受入れに対する反発があった。しかし、他のEU構成国で暮らしているイギリス人にとっては、EU離脱はEU市民権の喪失につながり不安があることが予想された。そこで、フランスとスペインに暮らすイギリス人にBrexitが与える影響につい現地調査をおこない、社会変化の観察とイギリス人へのインタヴュー調査を行った。 研究発表としては、EU市民権を行使してフランスに居住しているイギリス人の実態について、7月に日本EU学会関東部会で報告した。 また、調査結果から、イギリス人にとっての国籍や市民権とは何か考察する機会となり、これについては論文にまとめ、5月に発表される予定である。 2018年12月には、フランスのストラスブールにて、The Consequesnces of Brexitというテーマで、政治学、歴史学、社会学、法学の研究者を日本、ヨーロッパ、北米から招き、国際シンポジウムを企画し、自身も「フランスに居住するイギリス人へのBreXitの影響」について研究成果を発表した。現在は、報告をもとに原稿をまとめ、同シンポジウムに参加した研究者たちとともに本の出版を準備している。
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