2018年度は主として以下の4つの研究活動を行った。 (1)8月下旬~9月初頭にかけてサンフランシスコ・ベイエリア地域で現地に移住した女性へのインタビューを行った。対象者からは①現地の日系学校や子どもの教育支援ネットワークについて、②現地で起業した場合の日系ネットワークからの経済的・社会的サポートの状況について、聴き取りを行った。また現地の日系人口動態についての公的統計の所在についても情報収集を行った。 (2)9月に日本社会学会第91回大会(於:甲南大学)において「国境を越えた職業達成に対する新規獲得学歴の効果―アメリカThe New Immigrant Survey(NIS)と戦後移住者インタビューの分析から―」をタイトルとする口頭発表を行った。同発表では、米国移民を対象にしたThe New Immigrant Survey(NIS)第一波調査(2003~2004年実施)の成人サンプル8252名のデータを分析し、国境を越えた職業移動における最終学歴の効果を、学歴を母国で獲得した者とアメリカ移住後に獲得した者とに分けて分析し、アメリカ移住後に何らかの学歴・資格を獲得することが、移住者たちにより有利な職業達成機会をもたらしていることを明らかにした。 (3)共編著書籍(耳塚寛明・中西祐子・上田智子『平等の教育社会学』を編集するとともに、第8章「国境を越えた職業達成に対する学歴の効果」を執筆した。同論文ではNISの公開データを分析し、①国際移動後の職業達成に与える学歴の効果は、同じ学歴レベルである場合、アメリカ国内で獲得した学歴を持っていたほうが高い職業的地位に就けること、②同じ学歴レベルである場合、女性の方が男性より低い職業的地位にしかつけないが、アメリカ国内の学歴を持つ女性は国外学歴を持つ男性よりも高い職業的地位に就ける逆転現象が起きていることを明らかにした。
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