本研究は、1950年代に製作・公開された何本かの日本映画が、米国(米軍)と日本(警察予備隊/保安隊/自衛隊)による二重のプロパガンダ映画であったと仮定し、米国国立公文書館所蔵の米広報文化交流局(USIA)文書の調査を通じ、それらの作品の製作拝啓や作品に込められたメッセージ内容を考察していく計画を立て、米国立公文書館での一次資料を用いた占領期のGHQによる対日映画政策を研究してきた谷川建司(研究代表者)と自衛隊による映画協力の事例を研究してきた須藤遙子(研究分担者)との共同研究によって、戦後日本の軍事組織が米国の関与の下で行なってきた映画広報政策(パブリック・ディプロマシー)を詳細に解明することを目的として共同研究がスタートした。 初年度(平成27年度)、第二年度(平成28年度)に米国立公文書館、同ニューヨーク分室などで必要な文書(具体的には、イェール大学のマーク・T・メイ教授によるUSIAの日本での活動についての調査報告書等)を発見し、第三年度(平成29年度)いっぱいまでに国立近代美術館フィルムセンター(減・国立映画アーカイヴ)、松竹大谷図書館、公益財団法人川喜多映画文化財団、国際日本文化研究センター等にて調査を進め、米国側資料と照らし合わせるべき日本側資料についての調査を終えた。 研究成果としては、本年度(平成30年度)の8月中を目途に、大月書店より『日本の対米従属の起源と米国の対日文化外交政策」(仮題。ISBN未定)というタイトルの下、マーク・T・メイ教授の報告書の翻訳と谷川・須藤による解説・論考部分を併せ持った書籍を出版予定で、本年度の5月中に全ての原稿の入稿を終える予定である。
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