研究課題/領域番号 |
15K03883
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
若林 幹夫 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40230916)
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研究分担者 |
南後 由和 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任講師 (10529712)
田中 大介 日本女子大学, 人間社会学部, 講師 (10609069)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東京 / 臨海部 / 都市 / 空間 / 時間 / 交通 / イメージ / 情報化 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、臨海副都心とその周辺を中心とする陸上および海上のフィールドワーク、前年度に引き続いての文献資料の収集と分析に加えて、1980年代以降の東京臨海部をめぐる言説がどのように変遷してきたかについての雑誌の記事の調査分析を実施した。 フィールドワークでは、臨海副都心・中央防波堤・晴海・夢の島・大井などの東京臨海部の都市空間の現状を、東京都心や周辺地域との関係においてそれらの地域がもつ立地や機能、移動・流通空間として捉えた際のスケールや隣接関係、風景等の点から概観した。 文献調査では、臨海部が東京という都市の中でもつ社会的な実定性と〈社会の地形〉を、空間形成の歴史的過程、都市空間の機能と意味、スケール、中心とエッジというトポロジカルな構造、交通・流通の体系のローカルおよびグローバルな機能と構造、陸と海・水路の関係構造等の点から読み解き、東京という都市の中で臨海部がもつ都心とも郊外とも異なる意味や機能を構造的に把握するための作業と議論を行った。 雑誌の記事分析では、行政による都市計画における地域と名称の設定とメディアにおける都市イメージの形成の関係を分析し、行政とメディアの間の言説とイメージの循環が、時代ごとに異なる臨海部の意味とイメージの産出にあずかっていたことなどが明らかとなった。 これらの調査・分析を通じて、臨海部という空間が近・現代の都市における「陸と海」の関係構造、ローカルおよびグローバルな産業構造の変動、都市が生み出した廃棄物やエントロピーの増大の埋め立てによる都市構造への組み込み、そのように生産された空間の機能や意味の付加をめぐる社会的諸アクターの競合や折衝、生産された空間を受容し消費する人びとの感覚や欲望、情報化と消費社会化の進展などに重層的に規定されて生み出された〈社会の地形〉であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールドワークと文献調査、雑誌記事調査を通じて、東京臨海部が東京および東京都市圏という都市の中でもつ意味や機能、構造を分析的に捉えるための視点と枠組みの構築を進めることができた。また、そのような枠組みを代表者・分担者ならびに補助メンバーの間で共有しつつ、フィールドワークや研究会で経過報告とブレインストーミングを繰り返すことで、研究チーム内で研究成果を相互に深めつつ共有し、次年度に向けた調査分析の展望を得ることができた。さらに、研究チーム全体およびメンバー各自の研究課題の成果の検討を通じて、研究のまとめに向けた方向性と今後の課題を確認し、最終年度である29年度の研究計画もまとめることができた。 上記の理由により、「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、地域と経路を限定したフィールドワークを数次にわたり実施することで、より具体的な実地データの収集と分析を行うと共に、住民や開発関係者を対象としたインタビュー調査も実施する予定である。 また、文献調査を継続しておこない、歴史的データだけでなく、豊洲市場問題や2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた計画や動向についての最新のデータの収集も進めていく。 雑誌記事の調査分析も継続して行い、東京臨海部をめぐる言説とイメージの関係構造のより詳細な構造の把握を試みる。 これらの調査・分析をもとにした論文や報告をメンバー各自が執筆し、何らかの媒体で発表すると共に、将来の出版を視野に入れつつ、研究成果の検討とまとめを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりもフィールドワークの実施回数が少なく、文献資料の収集に用いた予算も少なかったため、次年度に予算を持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在の研究目的や研究進度に応じて、重要度が高く専門性の高い文献収集や、都市やメディア関連の幅広い文献収集に使用する。 また、フィールドワークを実施し、資料収集・整理のために学生・院生のアルバイト予算としても使用する予定である。
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備考 |
いずれも研究代表者および分担者が参加した対談、トークセッションの記録。
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