研究課題/領域番号 |
15K03885
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浦野 正樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20160335)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域アイデンティティ / 災害 / 集合的記憶 / 地方都市圏 |
研究実績の概要 |
本年度は、既存の災害における地域の集合的記憶や地域アイデンティティに関して、文献研究を行い、情報整理と参照点の抽出を行った。それと並行して、東日本大震災の被災地である福島県いわき市、宮城県気仙沼市、岩手県大槌町の三地域に焦点を当てて、災害過程におけるフェーズごとの状況の整理と情報・資料(文献・統計資料など)の収集を進めた。 これらの三地域は、地方都市圏内に明確な中心部と周縁部を有し、東日本大震災前後の災害過程において中心-周縁関係から生じている諸事象に影響を受けてきているという点で共通している一方で、災害因(いわき市=原発災害・津波災害/気仙沼市・大槌町=津波災害)、都市圏の規模(いわき市=大、気仙沼市=中、大槌町=小)、都道府県、といった点で相違があり、地域の集合的記憶や地域アイデンティティの(再)構築を通じた、地方都市圏における中心-周縁関係のあり方の比較検討を行ううえでは有益だと考えたからである。なお、三つの対象地域のうち、大槌町については、震災前後の社会ネットワークや取り組みの実態把握についても実地ヒアリングなどを進めている。 個別調査では、まずこれまで収集したデータソース等に基づいた各対象地域に関する情報収集・整理を行い、それぞれの地域特性、土地利用の歴史、被害の特徴等、震災前後の状況の推移を時系列で把握できるようにし、そのうえで町内会長や公民館長等、すでに信頼関係を構築している地域のリーダーへの現地調査も行いながら、復興まちづくりを担う住民組織(町内会、消防団、婦人会など)、行政、復興支援者(NPO、民間研究所など)、各種経済団体、文化活動団体(伝統芸能保存会、老人クラブなど)、地域住民が多く働く事業所等、どのような地域組織が存在しているか(していたか)を明らかにし、各地域組織の役員(複数名)に対する聞き取り調査を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の初年度は、地域情報の整理に時間がかかったことと、現地での調査活動は暫時進めてはいるものの現地の地域集団やネットワークの把握に手間取ったことなどのため、調査対象地での個別のヒアリングの開始がやや遅れ気味になっていた。しかし、この間、新聞・雑誌・インターネットなどの情報や別の共同研究による調査活動等を手掛かりに、現地の地域集団やネットワークについてもある程度の情報の蓄積ができてきたため、上記の課題は解消しつつある。今後、集中的に研究上の課題を吟味検討したうえで、研究進展に尽力することにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、まず次のような項目についての個別の事例調査を展開していく方針である。(1)これまで収集したデータソース等に基づいた各対象地域に関する情報収集・整理を行い、それぞれの地域特性、土地利用の歴史、被害の特徴等、震災前後の状況の推移を時系列で把握できるようにすること、(2)町内会長や公民館長等、すでに信頼関係を構築している地域のリーダーへの現地調査を行いながら、復興まちづくりを担う住民組織(町内会、消防団、婦人会など)、行政、復興支援者(NPO、民間研究所など)、各種経済団体、文化活動団体(伝統芸能保存会、老人クラブなど)、地域住民が多く働く事業所等、どのような地域組織が存在しているか(していたか)を明らかにすること、(3)各地域組織の役員(複数名)に対しての聞き取り調査を実施すること。 聞き取り調査では、①各組織の活動理念、②各組織の分野的な活動範囲、③各組織の地理的な活動範囲、④他の地域組織との関係(他の組織の役員との兼任状況、活動理念や活動領域の重なり具合など)、⑤地域外の組織や個人との関係(量的な関係の広さ、および関係の性質など)、⑥復興事業への見解、⑦東日本大震災前後の災害過程の各フェーズにおいて①~⑥がどのように変化したか、などを主に明らかにしていく。それを踏まえて、復興局面にある地域社会の動態を浮き彫りにしていく方針である。 同時に、現地では地域資料や災害関連資料の収集のため、図書館や市役所・町役場で(被災していれば、県庁や県公文書館でも)文献調査を実施し、各地域の地域特性と災害対応から復興に至るまでの課題の相関などを整理していくことにしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の初年度は、地域情報の整理に時間がかかったことと、現地での調査活動にあたって現地の地域集団やネットワークの把握に手間取ったことなどのため、調査対象地での個別のヒアリングの開始がやや遅れ気味になっていた。しかし、この間、新聞・雑誌・インターネットなどの情報や別の共同研究による調査活動等を手掛かりに、現地の地域集団やネットワークについてもある程度の情報の蓄積ができてきたため、上記の課題は解消しつつある。今後、集中的に研究上の課題を吟味検討したうえで、研究進展に尽力することにしたい。 したがって、第1年度(昨年度)残した未使用分は、ほぼ当初の予定通りの費目で使用する計画である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究経費の使用計画は、第1年度(昨年度)の未使用分については、ほぼ第1年度の未使用分の用途で、第2年度に持ち越して使用する計画である。未使用分の主な項目は、国内旅費と謝金であるが、国内旅費における出張先、謝金等の使途については、当初の費目・用途とほぼ同様のかたちでの使用を計画している。第2年度については、ほぼ元の計画に準じた用途での使用を計画している。
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