研究最終年度となる本年度は、ジェンダー役割期待の比較研究を、女性移民の視座を組み込んだ研究枠組みに発展させ、研究成果を出版物として出版させるべく、論文の執筆・投稿・修正・校正に充てる1年間となった。前年度までの調査・分析結果を、最終成果としてとりまとめた論文(Comparative Research on Gender role Expectation between Thailand and Japan)を執筆し、修正のうえ学術誌に投稿し、2018年5月現在も、査読が進行中である。もし現在投稿中の学術誌の選に漏れた場合、速やかに再構成・修正のうえ別雑誌に再投稿誌し、今後、修正・校正を経て、いずれかの学術雑誌から出版したい。 また、本調査から派生して生まれた研究成果のひとつとして位置づけられる、Social vulnerability of marginalized people in times of disaster: Case of Thai women in Japan Tsunami 2011が、査読論文として出版された。Kannapa Ponpongratとの共著である本論文は、日本の家庭-とくに東北地方の伝統的家庭のなかで「妻」や「母」としてのジェンダー役割を長年担ってきたタイ女性たちに焦点を当てた。彼女たちが、2011年度の東日本大震災とそれに続く津波災害の際、被災地の家庭や地域コミュニティのなかで、長年、日本の家庭内でジェンダー役割を担ってきたにも関わらず、外国人移民として脆弱な立場に置かれた様子を分析した。本論文からは、たとえ長年にわたって家庭内やコミュニティ内で、「妻」や「母」もしくは「嫁」として期待されたジェンダー役割を担ってきたとしても、災害など特定の契機によって、結局は「外国人」「移民」としての脆弱性に曝されてしまうことが指摘された。
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