研究課題/領域番号 |
15K03890
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
松戸 庸子 南山大学, 外国語学部, 教授 (30183106)
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研究分担者 |
松戸 武彦 南山大学, 総合政策学部, 教授 (10165839)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | デジタル档案制度 / 対外拡張主義 / 監視社会 / 異形の資本主義 / 強権国家 / 暗黙の保証 / ポスト・モダン / 官民パートナーシップ |
研究実績の概要 |
最終年度は予備調査と論文執筆を行った。 まず中国人研究協力者の調査基地である遼寧省瀋陽市や近辺都市(撫順市と本渓谷市)で廃棄物処理場や関係労働者の集住地やデモ(賃金遅配による)発生地及び重化学工業集積地の外貌の観察を行った。またアンケート調査の実施が確定している(中国側研究者の承諾済み)オルドス市での調査に関し調査票設計の最終段階の調整(ワーディングや翻訳作業の確認)を行った。特に内蒙古でのアンケート調査に関しては科学研究費補助金の採択が得られればすぐに着手できる段階にまで漕ぎつけた。 同時進行で論文の執筆を行い、デジタル統制に裏付けられた中国の強権国家化について「異形の資本主義」という角度から、対外的に強圧化する外交と対内的なデジタル統制の同時進行の実態やそれを支える官民の意識構造の特徴を記述・分析し(松戸庸子論文)、そうした現象をV.シュトレークの立論を援用することで、こうした異形性が実は市場経済社会の中では債務の膨張と民間への付け替え、ひいては危機の先送りにすぎないこと、また、中国が後発資本主義で、初期条件に恵まれたことと社会主義のパターナリスティックな論理から特異な統制システムが形成されているとの仮説を提起した(松戸武彦)。 4年間に亘る本研究の目的は、中国の抗争政治(陳情活動、デモや暴動などの集合行動)に関する実証研究であったが、運悪く、強権化する習近平の実権掌握と統制強化(政府批判や海外勢力への過度の警戒からくる各種立法や監視カメラや顔認証などの蔓延)の時代で実地調査の難度は上昇した。それでも個別ケースの当事者と面談したり、中国人社会学者と個人的な信頼関係を築くことで、資金問題が解決できさえすれば、アンケート調査や環境・廃棄物処理問題に関する聴き取り調査の実施可能性は確保している。この点は中国人研究者でさえ中国国内で調査研究を忌避する今日においては出色と言える。
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