理論的な枠組みは、簡単に記述すると以下のようなものである。構造化理論の概念を援用しつつ、構造要因についてはたとえばポスト工業化による女性の再雇用労働化を意図せざる結果として位置づける。次に制度要因による社会変化(たとえば育児休業制度による女性労働力率の増加)については、意図された結果として捉える。こういった作業によって、女性の労働力参加という社会変動をより立体的に記述できる道具を整備することができた。 日本の場合、高度成長期から安定成長期にかけて、独特の内部労働市場型の雇用制度を構築してきた。女性の(再)労働力化は1970年代から進行したが、初期段階においては高度成長の終焉という外挿的な要因による意図せざる結果として説明できる。すなわち、家計補助的な女性労働の増加である。意図せざる結果としての変化であるため、制度的なサポートを伴う意図された成果ではなかった。 女性の経済活動の活性化を意図した制度は、日本型内部労働市場にマッチした人事業化システムである職能資格制度が成熟した1980年代に、男女雇用機会均等法としてスタートした。しかし内部労働市場における日本的・男性的働き方は、家族キャリアを考慮する女性にとって排除的に作用する。なぜなら、組織が内部労働市場における労働調整のために、メンバーに無限定的な働き方を要請するからである。 育児介護休業法といった「意図された」政策・制度にもかかわらず、キャリアを中断する女性がいまだ顕著に存在するのは、以上のような構造的な背景があるからである。少子高齢化のなかで女性の本格的な労働力参加と共働き社会化を進めるためには、労働調整のあり方を意識した働き方改革を推進する必要があることが示唆される。 成果は、国際発効果を考慮して、海外の著名出版社から行うことにした。Springer社と契約出版を行い、上記の成果を作成した。出版は2018年になる。
|