研究課題/領域番号 |
15K03897
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
竹内 洋 関西大学, アジア文化研究センター, 客員研究員 (70067677)
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研究分担者 |
井上 義和 帝京大学, 総合教育センター, 准教授 (10324592)
牧野 智和 大妻女子大学, 人間関係学部, 専任講師 (00508244)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教養 / 阿部次郎 / 安岡正篤 |
研究実績の概要 |
研究目的は近代化過程で「治者の教養」がどのように再構築されてきたのかを解明することである。その問いに対して、1年目の平成27年度には、3つの作業をおこなった。第1に大正・昭和前期に旧制高校を中心に影響力をもった知識人の代表格として阿部次郎を取り上げ、彼がどのように教養派知識人になっていくのかを同時代の社会状況やエリート文化とあわせて分析する作業をおこなった。その成果は竹内洋「教養派知識人の運命―阿部次郎とその時代」として前年から『ちくま』に連載が開始され、平成27年12月号の第15回をもっていちおうの完結をみた。第2に昭和期に政治経済の指導者に影響力をもった教養のコンテンツとキーパーソンについて文献調査を開始した。牧野智和は経営雑誌(コンテンツ)を中心に戦後の経営者層にとっての教養の意味を明らかにするべく、井上義和は安岡正篤(キーパーソン)を中心に人格を通じた思想的感染の範囲を画定するべく、それぞれ調査を開始している。第3に現代の経営者層にとって太平洋戦争末期の特攻の物語がもつ教養的機能について調査を開始した。井上義和「記憶の継承から遺志の継承へ―知覧巡礼の活入れ効果に着目して」(福間良明・山口誠編『「知覧」の誕生』柏書房)はその最初の成果であり、これを足がかりに旧陸軍特攻基地・知覧での経営者幹部研修への参与観察や主催団体への聞き取りなどフィールド調査に着手した。2年目は、隣接領域の研究者の助言も得ながら、3系統の作業で得られた知見や枠組みをすりあわせて仮説を構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に挙げた3つの作業のうち、第1の阿部次郎関連および第2の経営雑誌の文献調査については順調であるが、第2のキーパーソンの人格を通じた思想的感染については若干遅れ気味である。それは第3の作業のうちフィールド調査が進んだためであり、2年目に調整する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは第1の作業の成果(竹内洋「教養派知識人の運命―阿部次郎とその時代」)について研究分担者以外の研究協力者も加えた討議をおこない、コンテンツの編成・伝達とパーソナリティを通じた感染の枠組みの有効性を検討する。それと並行して、引き続き、第2、第3の作業(文献調査+フィールド調査)を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の竹内については、パソコンの機種選定に迷って購入できなかったことと、多忙のため予定していた取材の出張ができなかったこと挙げられる。研究分担者の牧野については、雑誌中心に文献調査を進めたため書籍購入が予定よりも少なかったことと、やはり本務校での業務が忙しく予定していた取材の出張ができなかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に予定していたパソコン購入、書籍購入、取材の出張を次年度におこなう。 また、当初の予定通り、研究代表者および分担者の各自の担当作業のために必要な出張と資料購入をおこなうとともに、分担者以外の協力者を招き、専門的知識の提供を仰ぎながら共通テーマについて討議する研究会合も開催予定である。
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