研究開始当初における本年度の活動計画は、前年度までに収集した資料や調査データを整理し分析した上で、それらの結果を学会発表などの形で公表すること、さらには一般書・研究書を出版することなどであった。そこでそのような計画に従って、実際に学会発表を行うとともに、よりいっそう詳しい分析を行うために調査で得られたインタビューデータのトランスクリプションの作成と編集を行った。また、出版社が関係しているために年度中にすぐには実現できなかったものの、一般書・研究書の出版の準備を始めることとなった。 具体的には、以下の通りである。まず一つの成果として、11月に開かれた日本社会学会第90回大会(11月4日、東京大学)において「〈悪〉から〈害〉へ──ハーム・リダクションと逸脱処遇の現代的変容」と題して学会発表を行った。この発表では、これまでの調査によって収集したハーム・リダクションに関連するインタビューデータや文献資料にもとづき、ハーム・リダクションの誕生および発展について、その誕生地である欧州での展開を中心に論じた。そこではとくに、日本ではまだほとんど知られていないハーム・リダクションの概要に加えて、これまで日本で報告されたことのない、その初期の歴史について発表を行った。 次にトランスクリプションの作成と編集については、効率的な研究のために、第一次のトランスクリプションは業者に依頼して起こし、さらにデータを聴きながらそれらに手を入れる形で編集を行った。これはとくに今後の研究論文や研究書において分析し、記述するために用いるためのものである。最後に一般書・研究書の刊行については、契約上詳しい内容を記載することはできないが、出版するための作業に入ることとなった。
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