本研究は、人びとの生活やライフスタイルの変化と、それに連動した自然環境の変化に直面しているベトナムの農村を対象として、持続可能な環境利用とコミュニティ形成、エンパワーメントのあり方を社会学的に検討することを目的としている。そのために、社会学のみならず、地域福祉学や都市計画論、老年学、開発教育など関連する分野においてこれまで実施されてきた市民調査や集落点検、地元学などの参加型調査の系譜とその方法論的課題を整理したうえで、ベトナムの農村に適合した参加型調査を検討・考案していく。
今年度は、まず、市民調査や集落点検、コミュニティ参加型リサーチの方法に関する先行研究を検討する研究会を13回(於:奈良女子大学)開催・実施し、CBPRをはじめとする研究動向の把握と方法論の検討を進めた。
つぎに、上記の作業と並行して、ベトナム南部における調査予定地の候補選定と事前調査を進めた。そのうえで、9月に、南部のティエンザン省において、1週間程度の現地調査を実施した。公的統計等の基礎資料の収集と関係者へのヒアリング、現地観察を行い、今後の本調査への協力依頼を取り付けることができた。さらに、インタビューで得られた知見を含め、「ベトナムの農村から見える風景」を主題とする論文を国内学会誌『ソシオロジ』(社会学研究会)で公表した。
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