研究課題/領域番号 |
15K03910
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松永 友有 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50334082)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 通商政策 / 社会保障政策 / 失業保険制度 / 自由貿易 / 保護貿易 |
研究実績の概要 |
英語論文'The Origins of Unemployment Insurance in Edwardian Britain'を、インパクトファクター付きの国際ジャーナルJournal of Policy Historyに投稿し、2017年秋季号における掲載が決定した。 本稿は、1911年国民保険法第2部として、イギリスが世界で最初の強制加入型国営失業保険制度を導入するというブレイクスルーに踏み切った原因について、オリジナルな知見を提示した内容の論文である。すなわち、失業保険制度の作成を担当した官庁である商務省の文書や担当官僚のウィリアム・ベヴァリッジなどの個人文書といった一次史料に基づいた実証研究を通じて、次のことを明らかにした。当時の商務官僚は、自由貿易政策下にあるイギリスの産業競争力の維持と強化を図るべく、主要輸出産業である機械産業・造船産業をカバーする失業保険制度を積極的に推進した。労働者が一時的に失業した際の所得補償をおこなうことが、両産業の労働組合による賃上げ圧力を軽減し、産業競争力の強化につながるであろう、という期待がその根底にあったのである。以上のように、イギリスの通商政策と社会政策との相互関係をオリジナルな視点から実証した本稿は、社会保障政策に対する通商政策の規定的影響を検出するという本科学研究費の研究課題を大きく前進させた意義を有する。 次いで、日本語論文「草創期の社会保障政策に対する通商政策の規定的影響-第一次大戦前の西洋諸国を対象とする国際比較研究」を、社会政策学会の機関誌である『社会政策』に投稿した。これは、現在審査待ちの状態にあるが、西洋の全主要工業国を射程に入れた国際比較分析により、自由貿易か保護貿易かという通商政策の相違が社会政策の態様に重要な影響を及ぼしたというオリジナルな知見を展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三名の匿名レフリーによる審査を経て、インパクトファクター付きの国際ジャーナルであるJournal of Policy Historyに科学研究費研究課題の一環を成す論文の掲載が決定したことは重要な成果である。三名の匿名レフリーの全てによって、「掲載を強く勧める」という評価が下された。 次いで、日本における社会政策関連の主要学会である社会政策学会の機関誌に論文を投稿中である。 その他、イギリスの通商政策や社会政策に関する研究の知見を活かしつつ作成した論文を、査読付き学術雑誌『国際武器移転史』に掲載した。また、日本経済評論社から出版された共著においても、論文を寄稿した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題である、「社会保障政策に対する通商政策の規定的影響に関する国際比較研究」を遂行するに際して、自由貿易国の代表であるイギリスに関しては、既に相当に大量の一次史料を渉猟し、研究成果をあげた。他方で高度保護貿易国の代表的存在であるアメリカ合衆国は連邦制国家であり、研究対象となる時期の社会政策は専ら州レヴェルに限定されているため、複数の主要州における史料収集がさらに必要である。 したがって、今年度はウィスコンシン州などの州史料を閲覧すべく、アメリカでの史料調査をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外調査を実施しなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
海外調査、具体的にはアメリカ合衆国での史料調査をおこなう予定である。
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