昨年度に引き続いて、日本、ドイツ、イギリスにおける介護保障システムと家族介護支援の関係に関する資料・文献の収集・整理を行い、ドイツにおける現地調査を行うとともに、研究成果の取りまとめを行った。具体的には、ドイツの介護保険制度改革の動向について、文献調査を行い、データでの推移の把握を行った。さらに、ドイツの現地調査を行った。調査結果から、ドイツの介護保険改革は、認知症と家族介護者支援の充実を目指すものであるが、家族介護者の介護負担は軽減されておらず、在宅での介護保険供給と保険財政の持続可能性が問われる制度改革となっていることが明らかになった。 日本とドイツの国際比較の視点から介護保険改革と家族介護者支援の課題をまとめた。ドイツも日本も介護保険と介護保障システムを巡る課題は類似している。特に人材不足の問題は深刻である。ドイツでは在宅介護を支える人材不足が問題となっており、在宅介護供給に制限をかける要因となっている。供給体制が追い付いていないことが、家族介護負担を重くしている。介護保険改革で家族介護者支援の給付が手厚くなっても、在宅介護供給が充分でないことが、家族負担の軽減につながらない要因となっている。供給体制を充実させることが家族介護負担の軽減にもつながるが、同時に介護保険料の引き上げや介護保険財政の課題にもつながることが、ドイツの介護保険制度改革の課題であることが明らかになった。保険と保険外のサービスの供給体制の充実が課題となる。
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