研究課題/領域番号 |
15K03917
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
杉崎 千洋 島根大学, 人間科学部, 教授 (60314613)
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研究分担者 |
小野 達也 大阪府立大学, 地域保健学域, 教授 (30320419)
正野 良幸 京都女子大学, 家政学部, 講師 (90514167)
金子 努 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (70316131)
越智 あゆみ 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 講師 (60445096)
中村 明美 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (20390180)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 見守りネットワーク / 緊急時対応 / 平時(日常)の対応 / 単身者など / 地域包括支援センター / 医療機関 / 住民 |
研究実績の概要 |
医療との関連を中心に、見守りネットワークによる単身者等への緊急時対応に関する2つの研究を行った。 ①見守りネットワークの現状把握と評価を目的とした見守りネットワーク効果研究:島根県松江市内の地域包括支援センター職員が、平成29年4月から平成30年2月までの11ヵ月間に実施した緊急時対応の全ケース調査を実施した。その結果、114ケースの緊急時対応があったことが判明した。単純集計を行ったところ、要介護度はほぼ半数が自立、世帯構成は独居と夫婦のみ世帯で半数以上を占めていた。緊急事態の種別で最も多いのは急病、次いで虐待、徘徊の順であった。第一発見者で最も多かったのは医療・介護などの専門職であった。夜間・早朝の対応もいくつか見られた。 ②緊急時だけでなく、平時(日常)に見守りネットワークを機能させ、促進させるための考え方の提示を目的とした見守りネットワーク促進・阻害要因研究:平成28年度に、単身高齢者等への緊急時対応経験のある地域包括支援センター職員を対象に、個別インタビューとグループインタビューを行っている。平成29年度は、これらのデータの質的分析より、次の4つが促進・阻害要因であることを明らかにした。a.クライアントのペースでかかわり続けることで、関係を構築していった。b.関係構築をすすめながら、クライアントの心身の状態、生活の状態の変化にタイミングよく介入。c.クライアントの同意なしに、見守り支援態勢を構築することの困難性。d.クライアントの居住する地域の住民の特性の影響。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
見守りネットワーク研究に関しては、地域包括支援センターによる緊急時対応の調査を終了し、単純集計によりこれまで不明であった緊急時対応の実態や特徴が把握できた。この調査により、緊急時対応の効果分析の基礎データを収集することができた。また、地域包括支援センター職員へのインタビューデータを分析し、緊急時対応、平時(日常)の見守りネットワークの促進・阻害要因を明らかにすることができた。 一方、イギリス2014年介護法の見守りなどへの影響に関する研究に関しては、担当者の体調不良などにより実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
医療との関連を中心に、見守りネットワークによる単身者等への緊急時対応に関する以下の2つの研究を進め、成果を論文などにまとめる。 ①見守りネットワークの現状把握と評価を目的とした見守りネットワーク効果研究:平成29年度に実施した島根県松江市地域包括支援センター職員による緊急時対応の全ケースデータを用いて、緊急事態の種類別(急病と虐待など)に緊急時対応の特徴的なパターンを明らかにする。また、緊急時対応ケースを見守りネットワークの比較的構築されている地域のケースと、そうでない地域のケースに2分し、第一発見者、発生~発見・対応までの時間などを指標として、効果の比較・分析を行う。 ②緊急時だけでなく、平時(日常)に見守りネットワークを機能させ、促進させるための考え方の提示を目的とした見守りネットワーク促進・阻害要因研究:単身高齢者等への緊急時対応経験のある地域包括支援センター職員を対象に実施した個別インタビューとグループインタビューデータを詳細に分析し、より精緻な見守りネットワークの促進・阻害要因を明らかにする。 これらに加え、島根県松江市における行政、医療機関、社会福祉協議会、住民の立場からの見守りネットワークの現状と課題、促進要因と阻害要因に関する情報取集を行う。同時に、他の見守りネットワーク先進地域における同様の情報の収集・分析を行う。それらを総合化し、見守りネットワークと医療機関とのつながりの促進・阻害要因分析を中心とした地域包括ケアに関する研究成果を、1冊の本にまとめる予定である。 イギリス2014年介護法が見守りに及ぼす影響の分析に関しては、文献研究により実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
見守りネットワークによる緊急時対応調査実施の謝金、同単純集計の謝金などが、当初の予想額より低額であったため。 平成30年度は最終年度であるため、見守りネットワーク効果研究のためのデータ解析、島根県松江市内や全国の見守りネットワークと医療機関とのつながりに関する情報収集、松江市で実施予定の成果発表会などのために使用する予定である。
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