研究課題/領域番号 |
15K03918
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
松本 由美 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (90627689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療保障システム / 予防 / 医療保険 / フランス / ドイツ |
研究実績の概要 |
前年度の研究成果を踏まえ、疾病予防に関する改革の論点整理を行うため、平成28年8月にマックスプランク社会法・社会政策研究所(在ドイツ・ミュンヘン)において関連文献・情報の収集を実施するとともに、国内外においてフランス・ドイツの研究者との意見交換を行った。これらの研究活動に加えて、フランスについては、医療システム現代化法(2016年1月制定)や新たな医療協約(2016年8月締結)等の最新の政策動向を踏まえた改革方策の検討を行った。これらの研究の成果は、次のような形で発表した。 まず、平成28年10月に開催された社会政策学会第133回大会において「変わりゆくフランスの自由医療」と題する報告を行い、このなかで開業医の医療提供のあり方が少しずつ変質すると同時に、予防や慢性疾患の管理といった役割が強化されてきていることを明らかにした。また、フランスのプライマリケアの領域における新たなサービスの供給形態について検討し、「フランスにおける「多職種診療施設」の発展」(『福祉社会科学』第7号、2016年12月)として発表し、慢性疾患患者への多職種による介入を推進するための仕組みについて考察した。さらに、予防や慢性疾患の管理において重要な役割を担っているフランスのかかりつけ医について検討し、「フランスにおけるかかりつけ医制度の導入」(『福祉社会科学』第8号、2017年3月)として発表した。 ドイツについては、前年度から健康増進・予防強化法(2015年7月施行)に関する研究を行っているが、一方で、疾病管理プログラム等の具体的な施策の最新動向についての検討がやや遅れており、これを補うため、平成29年3月にマックスプランク社会法・社会政策研究所において関連文献・情報を収集し、研究をさらに進めるための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フランスにおいて予防や疾病管理を強化するための政策的な取組みや工夫は、医療の質やアクセスの向上、効率化等を主目的とした様々な改革方策のなかに埋め込まれているため、それらを明らかにするために個々の改革方策を具体的に検討する必要が生じた。このため平成28年度は、これらの改革方策の分析のために多くの時間が必要となったが、検討を通じて、フランスの医療保障システムにおいて「予防」の比重が高まりつつある具体的な状況を明らかにすることができた。このような作業は、改革方策の論点整理を行い、医療保障システムの変容を明らかにする上で不可欠なものであるが、このためにドイツの改革方策に関する検討がやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の前半においては、まず疾病管理プログラム等に関するドイツの改革方策についての検討を行う。さらに、フランスとドイツにおける補足調査と研究者等との意見交換を通じて、両国における改革方策について総合的な検討を行うとともに、予防重視型の医療保障システムへの変容について考察を行う。 年度の後半においては、研究全体のまとめとして、医療保障システムにおける予防の位置づけに関する検討を行うとともに、日本における予防重視型の医療保障システムのあり方について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
定期購読している雑誌の費用が年度末に確定したが、予定よりも安価であったため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究において、文献の購入費用として活用する予定である。
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