本研究では地域包括ケアという規範理念が浸透していくことを見通しつつ、それに寄与する高齢者ケア施設経営の実態に着目した。その際、米国の高齢者ケア施設経営と日本の特養経営を比較して、その相違点を抽出した。 米国の施設は多様なケアが受けられるという選択肢の存在に価値を置くため、入居者の地域感覚は行政的な「地域性を越えたもの」となっていた。他方で日本の施設は、ムラ社会的な歴史と風土に合ったケアに価値を置くため、行政的な自治体という「地域性に限定されたもの」となっていた。米国では管理職の経営により「徹底的専門性」が重視され、これに対し日本はケア職の現場力により「拡大的専門性」が重視されていた。
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