本年度は本調査前のプレインタビューを実施した。現制度においては高齢期は、現役時代のライフステージの状況が影響を及ぼし、結果として高齢期の生活状況にあらわれる場合が多い。そのことを踏まえてインタビューは、自営業、女性、シングルマザーに視点をおいて行った。 プレインタビューの結果、高齢期に入った現在でも、自営業の仕事を続けているが、それは自分自身の生きがいや幸福度のためにというのが主な理由であった。同時に、高齢期を支える社会保障は低年金受給にとどまり、生活の糧とはなっていなかった事例があった。 別のケースでは、現役世代に母子世帯となったが、仕事は派遣労働などの非正規労働を短期間ずつ繋いで就労してきた結果、低年金となっていた例もあった。現在は臨時職として働いている。 事例ではいずれも、国民年金の保険料について滞納や免除時期が存在した。また、低年金であっても自分自身の一定の収入があること、また子ども世代との関係もよいことが、共通点としてあった。そのため、低年金でありながらも特段、現状の生活に立ちゆかなくなる状況ではなかった。 また、女性の貧困を概観するために、女性の貧困に関する先行研究について整理をしているところである。現時点でみえてきたことは、貧困の実態がありながらも「女性の貧困」というキーワードが用いられて議論されるようになってのは2000年代になってからということ、母子世帯に代表される貧困は戦後すぐ確認されながらも、それほど問題とはならなかったことなどが改めて確認できた。
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