本研究は、単身女性が高齢期に貧困に陥る原因を探るものとしてインタビューを中心に研究を行った。単身女性の高齢期における貧困率が高いことは、社会保障の加入状況や働き方が影響しているが、なぜそのように至ったのかを、かつてシングルマザーだった女性も含めて、ライフヒストリーを中心にヒアリングした。 その結果、次のようなことが明らかになった。(1)かつてシングルマザーであった単身女性は子育て期に、自分自身の高齢期の生活設計がなされておらず、優先して子育てをしていた。それ以前に日々の収入を確保するがゆえに、自身の社会保障が無関心となる状況があった。(2)子どもを持たなかった女性も長期的な視点よりも短期的な生活を重視していた。就労の状況もいわゆる「結婚適齢」前後に結婚予定の有無に関係なく退職を考える(構造的な理由も含めて)ケースが一定数あり、そこでキャリアを中断せざるを得なかった。(3)全体的に年金制度などの情報に乏しかった。さらに、(4)年金制度の理解の不十分さに加えて、高齢期の女性の中には、夫や夫の家族から、年金制度への加入の必要性はなく、夫の世帯収入で生活の困難はないと、年金制度への加入をとどまった事例もあった。 以上のような結果から、年金制度に見られるように、制度自体は平等で整備されているからといって、情報の不徹底や本人を取り巻く家族からの力関係など、そのアクセスや本人を取り巻く構造的な問題が潜在していることが推測される。
|